この20年で時代は大きく変わったが、今後20年の変化は、その比ではない。思いもよらない変化が次々と起きるこれからの社会では、「たくましさ」、「地頭のよさ」、「社交性」が常に求められるのだ。「世界標準の子育て」では、4000名のグローバル人材を輩出してきた著者が、世界中の子育ての事例や理論をもとに「未来の子育てのスタンダード」を紹介していく。
2種類の自信、「根拠のない自信」と「根拠のある自信」
子育ての3つの条件の中で、もっとも大切なものが「自信」です。子どもの「自信」を強くすることができれば、子育ては90%成功したといっても過言ではありません。
「自分はできる!」という自信が、環境の変化にもへこたれない、挫折もバネにできる、そんなタフネスさの源になります。また性格的にも、「自分はできる!」と心から信じられる子は、勉強、スポーツ、人間関係に積極的で前向きな性格になります。
つまり、新たな環境へのチャレンジを恐れない、「勇気」と「根性」に満ちあふれた子どもに育つのです。
自信には2種類。
1)「根拠のない自信」と
2)「根拠のある自信」があります。
一つ目の根拠のない自信とは、言い換えれば「親から受けた愛情による自信」。自分は愛されている、守ってもらえている、という安心感です。これは、子ども自身では獲得できない、親がつくってあげるべき自信です。
もう一つの「根拠のある自信」とは、「子どもが自分で獲得する自信」。習い事などを通して「自分はできる」「一つのことをやり通すことができた」といった自発的な努力によって得られる自信です。
自信は、秩序や礼儀を重んじる文化では育ちにくい
ところがこの自信、集団の秩序や礼儀を重視する日本では育ちにくい面があります。
自信の源泉は、子どもが自分の意思でものごとに取り組んだ時に「自分の力でできた!」という成功体験にもとづいて生まれるものです。つまり、子どもの自主性を尊重して、子どもがやりたがっていることをやらせてあげなければならないのです。
しかし、「他人へ迷惑をかけないこと」「集団のルールを守ること」を重んじる日本の子育てでは、子どものやりたいことを自由にやらせるよりも、子どもの行動を制限しようとする場面が多いのです。
子どもの行動をコントロールできる(=きちんとしつけている)親が「良い親」であり、集団のルールを守れる子が「良い子」である。
そんな文化が社会の根底にあり、親子に無言のプレッシャーを与えています。
もちろん、公共の場や集団でのルールを教えることは大切です。しかし、親が過剰に周囲の目を気にして「あれしちゃダメ!」「これしちゃダメ!」と子どもの行動を制限していると「自信育て」においてまずい結果を招くことになるのです。
過干渉で自信をつぶされる子どもたち
たとえば、2歳児が一生懸命コップで水を飲もうとしているのを親が手出しして飲ませてしまう、ということがあります。
このように、子どもが自分の意欲でやろうとしていることを親が先取りする行為を「過干渉」と言います。
過干渉は必ず子どもからやる気を奪い、自信を減退させます。
「人の手を借りずに自分でやってみたい」、「自分で試してみたい」というのは人間の自然な欲求なのです。
それを「危ないから」「汚すから」「時間がかかるから」と親が横どりしてしまうと、子どもの成長機会を奪ってしまいます。
これは、子どもが何歳になっても同じです。親は、「手出し・口出し」したい気持ちをグッとこらえて、子どもを見守ることが大切です。
自信を育てるためには、自主性を尊重して自由に行動させなければならない。一方で子どもをしつけるためには、行動を制限しなければならない。「自由と制限」、この2つをバランス良く与える子育ての実践が、親には求められるのです(その線引きは、世界標準の子育て第4章に詳しく収録しています)。