Sチャートにより“あるべき姿”を描き、BPRを実現

 HIT法では活動に参加する全員が、自分の業務を“Sチャート”に表し、改善を行う。BPRを進める場合、このSチャート同士を連結させた“Dチャート”を使い、マクロ的な視点で業務の流れを見ていく。
 


  実際のチャートを見てみよう(図参照)。これは人事部の退職に関する業務の流れをDチャートで示したものだ。左側がAsIs(現状)、中央がCanBe(暫定案)、右がToBe(あるべき姿)だ。

 AsIsを見ると、退職に関する業務だけでも膨大な作業があることがわかる。この中にはムダな作業の代表である「転記」「照合」などが多く含まれる。転記や照合をなくすには、情報を入力、作成した時点で最終成果物となるよう、業務を変える必要がある(=発生時点処理)。

 たとえば、社内で作成される情報は、システムに直接入力してもらう。社外から入ってくる伝票は、紙ではなく電子データにしてもらう。こうすることで、なるべく発生時点処理に変えていく。そのような視点で、あらゆるムダを省いたToBeモデルを最初に作成するのだ。

 ただしToBeモデルは理想形であり、実現できるとは限らない。「予算がなくシステム化できない」「取引先から電子データをもらえない」などの制約条件があるからだ。そこで制約条件を考慮しながら、できるだけToBeに近づけたCanBeモデルを作成して、HIT法によるBPRの改善提案が完成となる。この図のケースでは、CanBeモデルをもとに業務を再設計し、約487時間の工数削減に成功した。HIT法の各ツールがあれば、ToBeモデルやCanBeモデルの作成が簡単にできる。