“モラトリアムおじさん”市場を
攻略するヒントを提案
シニア研究チーム「VRエイジング・ラボ」では、これまでのシニアマーケティングがうまくいかなかったのは、表層的な現象ばかりを重視してきたせいだと考えた。
現実として、すでにシニア層には多種多様な価値観が複雑に混在している。
同ラボによれば、シニアの代名詞とされている「アクティブシニア」は、全体の2割もいない。表層的に尖った動きを示す層だけを対象にしていると、残り8割はこぼれ落ちてしまうのだ。
そこで、膨大な定量・定性データと学術的な研究を基に、現代シニアを2軸(志向軸と行動軸)4象限にプロットし、6グループ(セグメント)に分類した。
その中でも、同ラボが最も注目したのが、変化や刺激に親和性を持っていながら積極性に欠け、目立った動きを見せない「セカンドライフモラトリアム」である。
このグループの男性は、仕事以外の人間関係が希薄で、誇りや成功の基準を企業名やポジション、年収などに置いていたため、自分を紹介する名刺がなくなったことに不安を感じている。情報収集意欲は高く、考えも保守的ではないが、仕事から解き放たれた現在、どう過ごせばいいかわからず、ただ背中を押されるタイミングを待っているという特徴がある。
同ラボでは、彼らを“モラトリアムおじさん”と命名し、新しいシニアマーケティングの本命と位置付けた。
「全体の約3割を占める最大派なのに、目に見える活動としては地味なのでメディアは取り上げづらい。そこに潜在的かつ有望なビジネスチャンスがあると考えたのです」
と亀田所長は語る。
その実態をリアルに知るために、横浜市港南区社会福祉協議会が主催する「男のセカンドライフ大学校」とも共創活動し、待ちの態勢から一歩踏み出して地域のために積極的な活動を始めている“モラトリアムおじさん”の聞き取り調査も行っている。
こうした分析を踏まえて、“モラトリアムおじさん”特有の価値観から生まれてくる不安や不満を解消するキーワードや攻略法を同ラボは提案する。
ポテンシャルに満ちたグループへのマーケティング戦略のヒントを創り出しているのだ。