女性の“モヤモヤフルネス”を解消する
コーピング価値の提唱
ミドル女性研究チーム「f2ラボ」のf2とは、マーケティングで用いられる年齢区分別の一つ(F2)で、35~49歳の女性層のこと。現在、約1340万人いて、家庭消費のキーパーソンといわれる世代だ。
この世代の女性像は、婚姻状態や働き方、子どもの有無や子どもの年齢などでもグラフィック特性がすでに多様化し、セグメンテーションが細分化されやすい傾向がある。
そこで、シニアや若者の心理的セグメント分類アプローチとは逆にF2の普遍的な共通項を見出すことに注力した。
その結果、浮かび上がってきたのは、彼女たちの“悩み多き日常”で、実に87%が普段の生活でモヤモヤ、イライラ、ストレスを感じていることが判明した。そこで、F2を理解するキーワードとして「モヤモヤフルネス」を掲げる。
F2は、母や妻など多くの役割をこなしながら、家事育児や労働時間が増えるため、自由に使える時間やお金が少ない。選択肢が多様だからこそ自己肯定感が揺らぐ。女性ホルモンが急激に低下する年代でもあり、身体の不調がモヤモヤに拍車をかける。
この負の心理状態を持ち直すため、考え方や気分を変えようとして行う消費を、新しく「コーピング消費」と定義した。
コーピングとは心理学用語で、人が負の心理状態にあるとき、嫌な気持を弱めたり、問題を解決したりするために取る行動全般を指す。
「コーピング消費の裏側には、F2が無意識に“こうありたい”“こうなりたい”と求めるものがあり、私たちはそれを『コーピング価値』と名付け6つに整理したのです」
と、亀田所長は説明する。
例えば新しい洗顔料の発売に当たって、他社と差別化を図りたい場合。
従来の発想では、汚れを落とし、なめらかな洗い心地でスッキリという価値構造が一般的だった。だが新しい洗顔料では、洗顔という行為に焦点を当て、きめ細かい泡に包まれるという「安心・安全」のコーピング価値を提供する。それが結果的にターゲット層から強い共感を得る。
機能価値がコモディティー化し、新たな情緒価値の発想や差別化が難しくなっている今だからこそ、“第三の価値”としてコーピング価値が重要になっているのだ。
これ以外にもf2ラボでは、F2層から共感を得られるCMクリエイティブ研究等、多角的な活動を行っている。