会社四季報ならぬ
「農家四季報」で指標を確立

 このような一連の取り組みが進めば、農家のあり方自体も大きく変わることになるでしょう。

 通常、農家が金融機関から融資を受ける際、担保になるのは固定資産のみです。これは法人経営等への発展を考えた場合、非常に厳しい状況です。しかし農家の実力というのは、例えば天候不良時にどれだけ安定的に収益を上げられるかによっても評価できるはずです。さまざまな情報がデータ化されていくことで、農家の潜在能力が体系的に評価されるようになれば、当然新しい出荷先の獲得にもつながるでしょうし、それを基に融資を受けるといったこともできるのではないでしょうか。この融資を元に、さらに付加価値を高めるという好循環が期待されます。

 そうしたデータが蓄積され、会社四季報ならぬ「農家四季報」のような指標が確立されれば、農家は、一般的な第二次産業のように「業績に基づく融資-設備投資-業績の向上」というサイクルを確立し、発展していくこともあるでしょう。

 そのためにも重要なことはデータの比較容易性を高め、さまざまな用途で活用しやすくすることです。日本では農地に関する情報は、全国に1700以上ある農業委員会が維持管理する「農地台帳」により管理されてきました。従来、個別管理されていた「農地台帳」は、数年前の農地法の改正によりインターネット上で公開することが決まったことを契機に、クラウド上に、同一フォーマットで集約されています。もちろん、個々の管理は、クラウド内のプライベート領域を用いて、個々の農業委員会が管理しています。

 今までは各地の農業委員会の窓口へ行って入手しなければならなかった農地情報が、個人情報を排除した内容に関しては、ネット上で検索できるようになり、農業への参入を目指す法人が農地を探すことが容易になりました。公開範囲は95%に達する見込みです。このようなデータも、プラットフォーム上で公開され、多面的に利活用されていくことが期待されます。