「メイド・バイ・ジャパン」の
世界展開を推進

 日本の農業が産業として成長していくためには世界への展開が不可欠です。しかし、農作物には賞味期限があるので、輸出に加えて多面的な海外展開方策を考えてもよいのではないでしょうか。すなわち、「メイド・イン・ジャパン」の高付加価値の作物を輸出することに加え、「メイド・バイ・ジャパン(made by japan)」による海外展開です。すでに、いくつかの企業がこの方向性で動き出しています。

 高品質として定評のある日本車は、日本でのみ作っているのではなく海外生産もしています。同じように「日本型農業」を海外展開して、それぞれの土地で高品質・高収穫効率の「メイド・バイ・ジャパン・ブランド」の作物を生産して稼ぐビジネスモデルです。

 世界の人口は2050年に90億人にまで膨れ上がると言われ、発展途上国の経済成長もあって世界的な食糧不足の深刻化が予想されます。そうした環境下で、日本型農業の安定生産、高品質は大きな武器となります。ノウハウを外国に盗まれるのを恐れるのではなく、逆にプラットフォームを通じて積極的に有償提供したり、現地の農業に寄与するソリューションビジネスを展開したりする。それによって、その国や地域の食糧供給・経済成長に貢献しながら日本としてもしっかり儲ける仕組みを作ることも、日本の農業が目指すべき姿の一つではないでしょうか。

 今、スローライフブームなどもあって、若い人たちの中にも農業に興味を持つ人が増えています。欧州の国々の中では、農業が「稼げる職業」の一つとして定着しているところもあります。日本でもネットなどで農家の成功例が紹介される機会が増えて同様の気運が高まっています。先端的ITの活用で「儲かる産業」としての農業が確立されればさらに優秀な人材が集まり、課題であった後継者不足は解消されるはずです。日本の農業が順調にその方向に向かうのかどうか、それは今後2、3年が勝負となるはずです。

(取材・文/須田昭久 撮影/加藤有紀)