Amazonのビジネスモデル特許
取得の衝撃

 昨年Amazonが画期的なビジネスモデル特許を取得しました。3Dプリンター技術による流通の変革を先取りする意図だと思いますが、ユーザーがAmazonで商品を注文すると、ユーザーの居住地に近い倉庫で商品の製造を始め、さらには配送中もトラック内で3Dプリントを行い、商品を従来よりも圧倒的に短時間で届けるというものです。時間が短縮されるのに加え、在庫を持つ必要がなくなります。

 3Dプリンターは、製品材料として使える素材が増え続けていて、精度も加速度的に上がってきており、着実な進化を続けています。だからAmazonの標榜するビジネスを「遠い未来の話」などととらえるべきではありません。

 3Dプリンター技術は、日本ではどうしても「ものづくり」の評価基準で判断されてしまいがちです。どんな材料で、どのくらいの精度のものが作られるようになったのか、とよく質問されます。そして、ある程度の精度の「もの」が作られるようになったという確証がないと、「そのあと」の未来はなかなかイメージしづらい、と言われることもあります。

 しかし、3Dプリンターを「デジタルトランスフォーメーション」の一技術として見たとき、その本質は、単に「もの」を作ることではありません。究極に発展した情報化社会の中で、「もの」がどこでどう作られ、どう届けられるのか、誰から誰にどうつながるのか、全てのプレイヤーが入れ変わっていく後の、未来の社会最適システムを描くことが重要です。そもそも、情報化社会における「もの」は、情報化以前の「もの」と本質的に違う存在になっていることにも気を付けなければいけません。ビジネスモデルそのものの抜本的な変革を考えることが、生き残るために必要です。

 Amazonが3Dプリンター技術を導入することによって、在庫管理の必要性がなくなり流通コストが極限までカットされます。これは、ネット通販の急速な拡大やドライバー不足など、物流業界が直面している大きな課題である人手不足の解消にもつながるかもしれません。

 この例でも分かるように、イノベーションには「逸脱」、つまりパラダイムシフトが必要であり、そもそも「従来の発想の延長上で考えていてはダメ」ということを肝に銘じる必要があります。日本人は発想を抜本的に転換することが苦手と言われていますが、それを克服して真のイノベーションに取り組まないと、産業界の未来は明るくなりません。