既存システムに手を加えず
業務を自動化できる
RPAが脚光を浴びている背景には、ビジネスのデジタル化の急速な進展がある。30年ほど前から企業内の情報処理はコンピュータ化が進められてきたが、個別業務のIT化が大きく進んだことによって複数のデータベースができてしまった。このため、バラバラのデータをまとめる必要性が生じ、一部の業務は手作業に頼らざるを得なくなっていた。特に日本では、各部署でそうした問題を解決してしまおうとする傾向が強かった。
しかし、2000年以降、企業が扱うデータは爆発的に増え、手作業や属人的な管理では追い付かない状況になった。企業がデジタル変革に対応するには、手作業による業務自体がボトルネックになってしまう。そのため、情報管理の仕組みを刷新し、全て新しいシステムに切り替える必要性が高まっている。
そうはいっても、情報管理システムを丸ごと変えるには相当な費用と手間がかかる。従来型の既存システム(システム・オブ・レコード、ガートナーではMODE 1と呼んでいる)は重厚長大で、信頼性と安定性が最優先され、手を加えるのは容易ではない。各部署の調整はもちろん、インターフェースにつなぐだけでも社内のガイドラインに沿った様々な承認が必要だ。
そこで注目され始めたのが、既存のシステムを大きく改変しなくても業務の自動化が進められるRPAだ。
「まずはRPAで可能な限り業務の自動化を進め、次のビジネスプロセスも含めた刷新のタイミングで、新しいITシステムに切り替える。RPAはそれまでの“つなぎ役”と考えてもいいし、恒久的な解決策として使い続けてもいいでしょう。いずれにしても、手作業に頼っていた業務の自動化に大きく貢献するのは間違いありません」(阿部氏)
「デジタルレイバー」は人間と違って24時間365日働き続けることができるし、ミスもしない。作業が多い時期はロボットの数を増やし、必要がなくなれば稼働を止めるといったコントロールも簡単にできる。
RPAを取り巻く現在の状況を、阿部氏はどのように見ているのか。
「当初のRPAに対する経営陣の捉え方は、クラウドが登場してきたときと似ているような気がします。何となく企業を良くしてくれそう、導入するべきかな、という感じですね。しかし、その認識は大きく変わってきています。業務企画部門やIT部門による評価により、RPAの基本的な機能や製品のタイプ、何ができて何ができないのかといったことの理解が進んできた企業が増えています。すでに導入している企業は1段ステージが上がり、新たな課題の検討が始まっています。引き続き、検討・導入する企業も増えています」