「人間の作業の模倣」が
RPAの基本

RPAを導入することで、デジタル変革への社員の意識をそろえる効果も期待できると語る阿部氏

 RPAの導入に際しては、まず、自動化する業務を見極めることが重要になる。現場主導でやみくもにRPAを入れると、管理のできない「野良ロボ」が社内にあふれることになりかねないからだ。それを防ぐには、IT部門がRPAを導入するためのガイドラインやルールを作り、全体をコントロールしていくことが必要。そうすれば、どこかでロボットに不具合が出たときも素早く対処できる。

 また、「ある部門の数人が業務の自動化で楽になった」というだけでは費用対効果として問題がある。様々な業務にロボットを適応させ、スケールメリットを出していくことも大切だ。

 では、具体的にどのように進めればいいのだろうか。

「まずは、実際にどういう業務を手作業でやっているのかを把握するため、バックオフィス系の全部門にヒアリングをかけたりヒアリングシートを配ったりして業務の洗い出しをするといいでしょう。あるいは、トライアルを受け入れてくれる部門だけで先行して進める方法もあります。併せて、候補となるRPAの製品について機能などを調査します。適用できそうかどうか、ITベンダーやコンサルティングファームの支援サービスを利用する方法もあります」(阿部氏)

 ただし、そこに時間や労力をかけ過ぎてはいけない。低コストとスピーディな導入で効果を出すというRPAの持ち味を殺してしまうことになるからだ。阿部氏は「導入のハードルは低いため、まずは部分的にでも入れてみて効果を確認、実感すべき」とアドバイスする。

 また、RPAに過度に期待するのもやめた方がいい。「RPAは人間の作業を模倣することが基本」と阿部氏は言う。高度なデータ分析を経営や業務の意思決定に活用するビジネスインテリジェンス(BI)などには無理があるのだ。例えば、「100万件のデータ分析の結果が1時間以内に欲しい」というニーズを満たす性能はRPAにはない。大量のデータをさまざまな角度から分析するといった性能重視の場合は別にシステムを開発すべきだ。

 ロボット自身が学習・判断して新たに機能を備えていくような進化を遂げるのはまだ先のことだろう。だが、ベテランの複雑な手作業でも、繰り返しの頻度が高ければ、ロボットに学習させて短期間で自動化することは可能だ。実際、学習機能が組み込まれたRPAの製品もすでに登場している。