AI連携による革新的な自動化で
5年後のRPA市場規模は1000億円に

 RPA導入でできることをひと言でいうと、現場の自動化になる。たとえば、画面に入力したり、画面からダウンロードしてエクセルに入力、Eメールを送信したり、それを読んでワードに転記してPDFを作成し顧客に送付するなど、人間が手作業でやっていたことをRPAは手順に沿ってすべて自動的にやってくれる。RPAは、システム導入で解決が難しかった最後の1マイルの、ユーザーが手作業でしか対応できなかった作業を自動化してくれる。

 次のステップとして大切なのはRPA+AIという考え方だ。AI+RPAの順番では決してない。まずは現場の自動化ありきで、それをやり始めると見えてくる新たな課題にAIやコグニティブ、OCR(光学文字認識)、BPM(ビジネス・プロセス・マネジメント)のテクノロジーを連携させることが重要だ。

 RPAと人間の違いの例として、例外処理の取り扱いがある。人間は手順書やマニュアルに沿って事務作業を行うが、わからないことがあれば上司や同僚に確認して作業を覚えていくから、できることの範囲が広がっていく。一方、RPAは人間のように考えることができない。だから、言われた(指示された)ことだけをずっとやる(正確に、忖度もせず(笑))。そうすると、せっかく現場の自動化を始めても、例外処理のための人間の作業はなくならない。その先に進むために、AI(人工知能)やコグニティブ(認知)といったテクノロジーが組み合わさってくる。

 現在のAIの活用法はナレッジデータベース的な使い方に留まっているケースが見受けられる。言い換えると「AIは赤ん坊のようなものだ。あなたが小学生や中学生に育て、大学を卒業させてPh.D.(博士)を取らせてはじめてプロになれる」のだ。つまり、圧倒的な量のデジタルデータによるテスト学習を効果的に自動化できなければ、学習の限られたAIで、できることは限られてしまうというわけだ。また目的がより明確でなく範囲が曖昧であればさらに学習は難しくなる。

 RPAがAIと連携すると、現場の自動化は一気に加速する。RPAのエグゼキューションログをAIが機械学習によって読み込むことによって、例外処理が自動化可能になる。RPAで自動化できた範囲を広げるために、AIを使い始めると実効的に効果が実現できてくる。

 余談だが、コグニティブツールを使って、RPAで会議の議事録を作成したことがある。やってみてわかったことは、できあがった議事録を見てもあまり役に立たなかったということだ。何故なら、議事録は何を言ったかではなく、だれが言ったかが一番大事で、同じことを言ったとしても、その人の役職によって重要度が変わってくるからだ。多数の出席者がいる会議で100%の音声による人間の識別が不十分だった。また、多くの会議がそうだが、書記係が議事録を作成するときは、結論への到達を前提にまとめる。だから、60分間の会議の単純な議事録を全部読んでも役に立たないのだ。しかし、高度に進化したAIが議事録の内容を要約することができれば、もっと役に立つかもしれない。実際にやってみないとわからないことも出てくる。

 大切なのはRPA+AIという考え方だ。AI+RPAの順番では決してない。まずは現場の自動化ありきで、それをやり始めると見えてくる新たな課題にAIやコグニティブ、OCR(光学文字認識)、BPM(ビジネス・プロセス・マネジメント)のテクノロジーを連携させることが重要だ。

 UiPathは日本におけるRPAの市場規模は5年後に1000億円程度になると見ている。

 1000億円というと、ERP(基幹業務システム)やマイクロソフトオフィスなどのデスクトップ製品と同程度の市場規模だ。RPAはこれらと同レベルの重要な経営基盤ツールとして企業に浸透し、さらにAIなどと連携することでその市場規模は加速度的に成長していくと考えている。