人間はより創造的な仕事へ
生産性や顧客満足度を高めるツール
現場の自動化が進み、個人が所属する部署、最終的には会社レベルで自動化が進むと、さまざまなことが解決できるようになる。よくRPAは人間の作業を奪うともいわれるが、決してそうではない。たとえば、人間には1から10までの能力があったとする。RPAがリプレースするのは、例えばそのうちの1から4までであって、その人が不要になるということではない。1から4までをRPAが自動化してくれると、人間は5~10の作業に集中できる。
これはわれわれのビジョンでもあるが、人間はより創造的な仕事を行うべきだ。RPAとAIが連携することによって、1から4が、5、6、7まで自動化できるかもしれないが、心のこもったコミュニケーションや、感性を打ち出すデザイン、データやデータで表すことができない事象をより深く広く考え、感じて意思決定を行うような作業は、人間のほうがよりよい仕事ができると確信している。
RPA導入に関する欧米企業と日本の経営者の考え方の興味深い事例について紹介したい。日本のある先進的経営者は、RPAの活用を進め、余力のできた人材を企画業務などに戦略的に再配置し、社員のモチベーションを高めて、最終的には生産性や企業カルチャーを高めていくと語っている。また、別の経営者は、RPAを導入して業務の効率化を進め、社員が顧客サービスに当てる時間を増やすとしている。
先行する欧米の経営者は、RPAを2、3年活用してきて、当初はコスト削減のために使うツールと見なしていたが、最終的には人間の創造性、生産性や顧客満足度をも高めるツールだとの結論に達してきている。一方、慧眼な日本の経営者は最初からそれを見抜いてRPAを活用する指示を出している。おそらくそれは、長らくその会社に在籍し、愛着やロイヤルティーがあって、いま置かれている経営環境のなかで、何をすべきかを、社員を中心において常に考察し続けている結果なのだろう。
日本におけるRPA活用の先進企業には、優れた現場のリーダーも存在する。彼らは、自分の仲間、特に中堅、若手の後輩にもっと元気を出してもらいたい、新しいことにチャレンジする機会を与えたいと考えていて、そのためには手作業でやっている業務をできるだけ自動化し、余力を捻出し、社員が創造的な仕事にシフトしていく手段としてRPAの活用を積極的に取り入れている。そういうリーダーが現場にいると、RPA導入は成功する。上司に「コスト削減をやるから、とにかくロボットを入れろ」と言われたのとでは、取り組みへの思いと愛着が違う。