大規模導入と安定稼働がポイント
スモールスタートから始めて全社展開へ
UiPathが提供しているRPAツールは、バーサタイル(汎用的)であることが最も大きな特徴だ。業種を選ばず、日本でも金融から製造業、商社、小売り、サービス、運輸、エネルギー、官公庁まで、あらゆる業界で導入が始まっている。
欧米では、すでに多くの企業でRPAが導入され、一部の先進企業ではAIやコグニティブとの連携も実用化が始まっている。たとえばCelonis(セロニス)というツールは、ERPのログを収集してデータマイニングし、どのプロセスが標準的か、あるいはそうでないかを分析して、RPAで自動化すべきプロセスを峻別する。このツールとUiPathとを連携した取り組みが行われている。
RPAの自動化が経営基盤として成功するためには、二つのポイントが大事だ。
第一は大規模導入である。あちこちで、バラバラで導入しても、効果は知れている。個人レベルから始めて、部署レベルに引き上げ、最終的に経営の全面的支援の下に、全社的に展開していく現場の自動化ができると、効果は想像を超えるものになるだろう。さらにつけ加えると、全社規模での展開を推進する場合は、最初にセキュリティ要件やコンプライアンス要件などもテクニカル要件とともにしっかり詰めて導入する必要がある。そのためには、RPAのツールがこのプロジェクトの大規模化をシングルツールとしてサポートできるだけの機能を備えていることが必要となる。
次に安定稼働だ。RPAの強みは、既存のアプリケーションを変更することなくアクセスできること事だ。逆にいうとRPAは既存のハードウェア、OS、アプリケーションの変更による影響を受ける。したがってRPAはIT環境の変化に対していかに安定的に適応するかその能力が問われる。そのためには管理する仕組みやツールが柔軟であることが重要だ。たとえば、プロセスのつくり方、エラーハンドリングの仕組み、ログの集中化と分析力などが十分であるかが挙げられる。
大規模導入と安定稼働が実現されれば、AIと連携して全社レベルのインテリジェント化が可能になる。
RPAに対する関心は、日本の経営者の間でも急速に高まっているが、まずはスモールスタートから始めて、それを礎に全社展開を検討してはどうだろうか。何故ならRPA導入は、企業カルチャーを如実に反映するため、他社の成功事例が自社にすべて当てはまるとは限らないからだ。既存のシステムの上に乗るということは、その企業のこれまでのシステム投資背景やシステム戦略も反映する。自社のカルチャーに基づいて、ベストなアプローチを考える必要がある。同時に、新しいテクノロジーの導入には、パイロット期間も必要だ。
私は日本の生産性を高める仕事がしたいと強く思い、外資系金融機関から世界有数のRPAのベンダーに転じた。2017年に欧米の事例を持って、日本でビジネス化を始めたときには、2年くらい日本企業は遅れているとの印象を抱いたが、現在はその差が縮まり、いくつかの日本の先進企業での取組みについては、すでに世界でも有数の事例になっている。
先進的なユーザー企業のなかには、「自分たちのノウハウを自分たちのなかに留めるつもりはない。広くオープンに開示していくことで、この国の生産性を高める一助になりたい」と話すリーダーも多い。この事例やノウハウの共有により現場の自動化の成功のためのビジネスモデルを日本レベルでつくり上げていくことは今後非常に重要となってくると考えており、UiPathとしても積極的に支援していくつもりである。ぜひ、PRAの活用が日本で広く認知され、日本企業の競争力復活に役立ってくれればと願っている。
(取材・文/堀田栄治 撮影/宇佐見利明)