「従来のエネルギー政策は、発電を行う会社を援助するなどの補助金型がメーンでしたが、今回はガラリと変わって、『電気ができたら買いますよ、だから努力しなさい』というマーケット創出の手法を取ります。欧米で太陽光発電市場が伸びたのも、全量固定価格買取制度の導入がきっかけでした」(小島教授)

 太陽光発電をはじめとする日本の再生可能エネルギーの技術は高いが、これまでは制度が適切でないため、なかなか普及が進まなかった。そのため技術革新が進まず、イノベーションが生まれないまま技術が古くなっていく、いわゆる「宝の持ち腐れ」状態にあったと、小島教授は指摘する。

 制度改革とは、言い換えれば売れるための仕組みづくり」である。再生可能エネルギーの全量固定価格買取制度により、この夏から日本に、新たなエネルギーのマーケット創出が期待されているのだ。

送電網の整備と情報公開の必要性

 家庭や企業が設置する太陽光発電がどんどん売電するようになる。そうなると、電気が大量に行き交うフリーウェイのような送電網を整備する必要がある。あるいは、行き交う電気を交通整理する役目も必要になる。こちらはITが活躍することになるだろう。

「東京都が進める100万キロワット級の天然ガス発電所など、再生可能エネルギー以外のプロジェクトに関しても、送電網へのフリーアクセスや使用料金の問題は、最重要事項に挙げられます。また、橋下徹・大阪市長が関西電力に情報公開を迫っているように、電力需給に関する情報が地方自治体に提供されるようになれば、消費の現場に最も近い地方自治体が、節電などの電力需要調整や多様な再生可能エネルギー電力の支援を行うという具合に変えていけるのです。これは、かなりの効率化につながるはず。ここにも大きな制度改革が必要です」(小島教授)

 ほとんどの自治体は、電力の需要と供給、それぞれの情報を持っていない。自らが電力事業者としてエリアのエネルギーマネジメントに乗り出す発想も、まだない。しかし、今後は市場の変容とともに、自治体の役割が高まっていくと考えられる。