IoTの広がりが、とりわけ製造業にとってデータ分析の強い追い風になるのは間違いないが、課題が多いのも事実。そこへ登場した“AIの民主化”を掲げるAIプラットフォーム「DataRobot」に注目が集まっている。DataRobotをいち早く導入したパナソニックの井上昭彦・AIソリューションセンター戦略企画部部長と、データロボットのシバタアキラ・チーフデータサイエンティストに、その解決策も含めて聞いた。

 これまでデータ分析は、データサイエンティストと呼ばれる専門家が長年の分析の経験や勘から大きな方向性を決め、その計画に沿って予測モデルを生成してきた。しかし、IoTによってデータの収集・蓄積が飛躍的に進み、膨大なデータを前にして分析モデルの生成・評価が追いつかなくなってきている。

 こうした中、注目され始めたのが、機械学習の自動化プラットフォーム「DataRobot」だ。世界トップクラスのデータサイエンティストのノウハウが詰まった1000を超える分析アルゴリズムから最適なモデルを自動選択し、その予測モデルの利用が妥当かどうかを簡単に評価できる。

 DataRobotを使えば、AIの力で何度でも簡単に予測モデルを生成できるため、ユーザーは解決すべき課題を把握し、成果を上げるためにどうするべきかという仮説の立案など、より高いレベルのデータサイエンスの問題に時間を割けるようになる。しかも、データサイエンスの専門家でなくても利用可能だ。データロボットではこれを「AIの民主化」と呼ぶ。

企業が持つデータから
最高の予測モデルを抽出する

井上昭彦
パナソニック ビジネスイノベーション本部
AIソリューションセンター
戦略企画部 部長(工学博士)

――製造業におけるデータ分析の課題は何でしょう?

井上 「イノベーションによる新事業創出」と、生産現場の「業務プロセスの効率化」の2つがあります。

 イノベーションに関しては、IoT(Internet of Things)の流れが加速する中、モノを持つ製造業が様々なデータを大量に取れるようになり、IoTのIの領域に反撃に出るチャンスが巡ってきたと捉えています。

 PCとスマートフォンだけの純粋なインターネット時代は、当社のような電機メーカーは苦戦を強いられました。しかし、モノがインターネットにつながるようになった今は、我々に優位性があるのは確かでしょう。データ分析を積極的に活用して巻き返しを図りたいと考えています。

 一方、生産現場のデータ分析活用は、かなり可視化が進んでいるため、さらに効率化を進めるには、その効果とコストのバランスを考えなくてはいけません。したがって、非常に高価な製品を造っている現場や、ものすごく大量に生産している現場から活用が進んでいくと思います。

――データサイエンティストの視点からはいかがでしょう。

シバタ センサーを工場の機器のどこにつけ、どういう周期でデータを取るのか、大量のデータをどう分析すればいいのかといったことはまだ確立されていません。その役割を担うのが、故障予知や歩留まり予測などの予測モデルを構築できるスキルを持つ、我々データサイエンティストです。

 実際には、多角的にデータの組み合わせを試行し、仮説を統計学的に検証していくのですが、データがあまりにも膨大なので、せいぜい2つくらいしか同時にできない。これでは部分的な分析にとどまってしまいます。そこで今、当社の機械学習の自動化プラットフォームであるDataRobotのニーズが高まっているのです。