「難化なき増加」の顕在化
高倍率化で受験動向にも影響が
19年の入試動向を占う上で、「難化なき増加」が重要になる。
もちろん、大学合格実績が大幅に増加すれば、必然的にその学校の入試は難化すると考えるのが自然だが、いわゆる模試の予想偏差値をみると、せいぜい1ポイント増くらいで受験生増=難化とはなっていない。
その理由として考えられるのは、近年では午後入試がショックアブソーバー(緩衝材)になっている事実だ。すべての午後入試がそうだ、というわけではないが、2月1日午後入試で最大受験者数となっている男子校の東京都市大付属で1倍台、女子校の東京女学館でも1倍台、共学校の國學院大學久我山は男子で2倍、共学校の東京農大第一は女子で2.18倍と、共学でこそ2倍に達するものの、男・女別学校では1倍台であるような入試実態がある。また、そもそも1月入試で首都圏最大の受験者数を集める埼玉の栄東A、千葉の市川第1回では、前者は1倍台、後者も女子が3倍近いが、男子は2倍そこそこと合格しやすい。
午後入試や、こうした1月入試の低倍率が受験生増による倍率難化を和らげている効果は、受験者数の大規模化に伴い、ますます大きくなっている、と思われる。
そうした中、19年入試での受験生数増大という状況下では、寮制学校の出張入試、帰国生入試、あるいは1月の午後入試など多様な入試機会の増大がより注目されてくるだろうと思われる。
また、2月1日、2日、3日の中学受験のメインストリームの入試倍率に注目すると、女子校の上位難関校で2.5倍、男子校3倍、共学上位校で3~4倍という倍率が多い中で、2日午前、1日午後、2日午後の男子校や女子校の多くで1倍台が多くなっている。つまり大変な倍率格差があるというのがこれまでの入試情勢で、半面、同じ日程の共学校の入試倍率は3~5倍という高倍率になっているケースが多い。
4月時点の森上教育研究所の観測は、19年入試の受験者数の伸びは18年の2.7%とほぼ同じ、というもの。そうなると、18年で見せた付属、半付属を中心とした20~30%もの受験生増がさらに続くかというとどうだろうか。
倍率予想が4~5倍にもなれば、やはり併願先には難度を下げて倍率の高くないところを一度は受験していくことになるから、そのような流れから中堅の男子校、女子校の2日午前入試、午後入試の1日、2日などが注目されることになるのではなかろうか。