「インスタ」といえば若い女性が個人的に活用するSNSというイメージが強い。だが、最近では企業広告の出稿媒体として注目度が高まっているという。インスタグラム広告を効果的に活用し、「テレビCM以上の効果を得られた」というキリンビバレッジのマーケティング担当者に話を聞いた。
ターゲット層に届いていなかった「話題性の高いCM」
ネット社会という言葉が生まれて久しい今であっても、依然としてテレビCMは商品の認知度を高める上で強力な武器である。だが、その一方で、CMが実際に消費者の行動に及ぼした効果を追跡・検証することには限界がある。
その点、インターネット広告は効果を数値として可視化することができるし、訴求したい顧客層にピンポイントで届けることも可能だ。
こうしたことから、キリンビバレッジは2018年3月からリニューアル発売した「キリン メッツコーラ」(以下、メッツコーラ)の広告宣伝ではインターネットメディアに軸足を置いた。そこで、期待以上に高い効果が得られたのが、これまであまり企業広告の媒体として認識されてこなかったインスタグラムでの広告展開だったという。
商品担当 脇山正大主任
そもそも、それまではどんな広告宣伝を展開していたのだろうか? キリンビバレッジマーケティング本部マーケティング部主任の脇山正大氏はこう語る。
「テレビCMを主体としながら動画配信も行うなど、マスに向けて認知度を高める王道の戦略を取っていました。人気芸人を採用したCMは注目され、動画の再生回数も400万回を超えるなど、話題性という点では抜群でした」
だが一方で、CMを見た消費者の「メッツコーラを飲みたい」という購買意欲には結び付いていないことが次第に明らかになってきた。その理由としては「何の商品のCMだか分からなかったから」だったという。
「メッツコーラの商品特性である『トクホ(特定保健用食品)の保健機能』と『強炭酸』の二つがほとんど伝わっていませんでした。それでは競合の中からメッツ コーラをあえて選んでいただくことはできません。何よりターゲット層としていた30~40代の男性に訴求できていないことが大きな問題でした。そのため、今年のリニューアルの広告戦略は思い切って方向転換し、商品名と特徴のつながりを明確にして、ターゲット層にしっかり商品を理解してもらうことに重点を置いたのです」
ターゲットを絞って訴求するならインターネット広告に分がある。こうして、18年のメッツコーラの広告展開は、テレビから大きく予算をシフトすることでインターネットを中心に行われることになり、そこで最も効果的だったのがインスタグラムだった。
なぜ、インスタグラムだったのだろうか?