「チャンスは与えるもの」
与えなければ花を咲かせないままの可能性も
図らずもPK戦に注目が集まったが、13位につけているJ1リーグでも、杉岡はアジア競技大会を戦ったU-21代表に招集された8月の4試合を除いて開幕から左ウイングバックに定着。坂も中盤戦以降で経験豊富な34歳のベテラン、ブラジル人のアンドレ・バイアから3バックの真ん中のポジションを奪った。
AFC・U-19アジア選手権を戦うU-19代表に招集されている関係で、レイソルとの準決勝は不在だったが、ともに19歳のMF齊藤未月とDF石原広教もいる。特に前者はU-19代表のキャプテンを担い、FW久保建英(横浜F・マリノス)ら個性豊かな選手が集うチームを束ねている。
J2を戦っていた昨シーズンを振り返れば、杉岡や齊藤、石原、今現在はJ2の愛媛FCへ期限付き移籍して武者修行している高卒2年目のMF神谷優太(青森山田卒)ら十代の選手が、同時に先発した試合もあった。若手を積極的に起用する意図を問われた曹監督は、意外に聞こえる言葉を残している。
「チャンスは与えるものだと、僕は思っています」
サッカーを含めた勝負の世界では、チャンスに関しては「自分の力でつかむ」と言われることの方が圧倒的に多い。対極に位置するスタンスに込めた真意を、指揮官はこう説明してくれたことがある。
「与えられたチャンスで普段の生き様が見えることがその子にとってはすごく大事で、それがよかろうが悪かろうが責任は監督にある。然るべきタイミングで責任を持ってチャンスを与えていかなければ、まいた種が花を咲かせないまま、くすんでいってしまうと思っているので」
言うまでもなく、チャンスを与える対象は若手だけではない。中堅やベテランを含めて、練習中やその前後における立ち居振る舞いを、周囲から「まるで超能力者だ」と驚嘆されることもある鋭い観察眼で、微に入り細をうがってチェック。ピッチへ送り出すための、ベストのタイミングを常に計っている。
そして、いざ先発メンバーを決めるに当たって、指導者の道を歩み始めてから貫いてきた鉄則がある。それは「監督が邪心を抱いてはいけない」――。例えば今現在ならば、ベルマーレは若手を育てるチームだ、というイメージを発信したい思いが指揮官の中で先行することは絶対にあり得ない。



