「出過ぎた杭は打たれない」
選手たちを成長させるキーワードとは?

 日常生活のあらゆるところへ、曹監督はアンテナを張り巡らせている。何気なく目に飛び込み、耳に入ってくる情報に、選手を成長させるキーワードが散りばめられているからだ。最近ではあるテレビ番組内で言及された言葉に「なるほど」と、あらためて触発された。

 「出る杭は打たれるけど出過ぎた杭は打たれない、と聞いた時ですね。若手に限らず、選手たちには出過ぎた杭になれ、オリジナリティーを出していけと言っています。出過ぎた杭くらいに自分へのハードルを置いておかないと、どうしても勝負への責任を避けるプレーが増えてしまう。人間が変わることはないと僕は思っている。変わったとすれば以前から持っていたものが表に出てきただけであり、それらを表に出させてあげることが僕の一番の仕事だと思い、指導者をやっているつもりです」

 杉岡は武骨なまでに1対1を仕掛ける姿勢。身長174センチとセンターバックとしては小柄な坂は機動力。そして、金子はボランチとしてプレッシャーを受けながらもボールを前へ運ぶ術。それぞれが自身の特徴を出過ぎた杭として受け止め、磨き上げながら横浜F・マリノスが待つ決勝戦を手繰り寄せた。

 「向上心がすごくある選手たちですけど、だからといって僕が『よくやっている』と思って見てしまえば、向上心という火はすぐに消えてしまう。まだまだ、と言い続けたことが、神様が彼らに決勝の舞台に立てるチャンスを与えたと思っています」

 三歩進んで二歩下がるといった形で、愚直かつ確実に成長してきた過程で邂逅した晴れ舞台に、感無量の思いを抱きながらも、曹監督は未来へつながる手綱を緩めない。

 その年、その年に出会った選手たち、特に若手を成長させる独自のメソッドを貫きながら、中田英寿を擁してアジアカップウイナーズカップを制した1995年以来となる、チーム名称が湘南に変わった2000年以降では初めてのタイトル獲得をかけた大一番を待つ。

TOP