ファンやサポーターをアッと驚かせた、フィットネスジム事業などを幅広く展開するRIZAPグループ株式会社(本社・東京都新宿区、瀬戸健代表取締役社長)のサッカー界への参入。RIZAPグループが合弁会社を介してJ1の湘南ベルマーレの経営権を取得し、10億円の資本投資と2020年までのタイトル獲得などへ「コミット」した舞台裏には何があったのか。背景を探っていくと、親会社を持たない市民クラブとなった2000年以降、何度も存続の危機に直面しながらも、ベルマーレが聖域として「育成型クラブ」のアイデンティティーを必死に守り抜いてきた結果に対し、「『人は変われる。』を証明する」を企業理念として掲げるRIZAPグループが深く共感した構図が浮かび上がってくる。(ノンフィクションライター 藤江直人)
RIZAPが合弁会社を設立し、
湘南ベルマーレの筆頭株主に
いい話ですね、という祝福とともに、いぶかる声も湘南ベルマーレの水谷尚人代表取締役社長の下には少なからず届いていた。
「いい話というお声が非常に多かった中で、本当なのか、という問い合わせもいただきました」
破竹の勢いで経営拡大を続け、いつしか「健康産業界の風雲児」と呼ばれる存在となったRIZAPグループ株式会社が、Jリーグのクラブ経営に乗り出すというビッグニュースは、4月3日の深夜にメディアの間を駆け巡った。
しかし、経営権を取得する対象として報じられた、湘南ベルマーレとの接点はなかなか見えて来ない。キャッチフレーズでもある「結果にコミットする」を介して、インパクトの強いテレビCMをオンエアしているRIZAPグループと、2009年以降の10年間でJ1とJ2の間を何度も行き来してきたベルマーレは、実は2016年秋から継続的に話し合いの場を持ってきた。
知人を介してRIZAPグループの瀬戸健代表取締役社長を紹介された、ベルマーレの眞壁潔代表取締役会長は、両社の間で交わされてきた議論をこう振り返る。
「お互いのシナジー効果があるのかどうか、市民とともに戦ってきた我々の次なる展望と、RIZAPグループの展望が合致するのかどうか。そういった点を長く議論してきました」
昨年夏には2016年1月から筆頭株主を務めてきた、株式会社三栄建築設計(本社・東京都新宿区)の小池信三代表取締役社長も交えて会食。交渉はさらに加速され、RIZAPグループと三栄建築設計が設立する合弁会社『株式会社メルディアRIZAP湘南スポーツパートナーズ』が、ベルマーレの筆頭株主となる形に最終的にまとまり、4月6日に正式発表された。
合弁会社の出資比率は、RIZAPグループの49.95%に対して三栄建築設計が50.05%だが、株主間契約によってRIZAPグループの連結子会社となる。これによりベルマーレは19年ぶりに責任企業となる親会社を持ち、RIZAPグループの全面サポートを受けることになった。