曺貴裁監督
湘南ベルマーレ曺貴裁監督の若手育成メソッドとは? 写真:松岡健三郎/アフロ

国内三大タイトルのひとつ、YBCルヴァンカップ決勝が27日午後1時5分、埼玉スタジアムでキックオフを迎える。17年ぶり2度目の頂点を狙う横浜F・マリノスと、初優勝を目指す湘南ベルマーレが対峙する「神奈川ダービー」となった大一番。近年はJ1とJ2を行き来することが多かったベルマーレは、7シーズン目の指揮を執る49歳の曹貴裁(チョウ・キジェ)監督が掲げる独自の育成メソッドの下で成長を遂げてきた、ルーキーを含めた若手選手たちがはつらつと躍動。中田英寿を擁してアジアカップウイナーズカップを制したベルマーレ平塚時代の1995年以来、名称が湘南に変わってからは初めてとなるタイトル獲得を狙う。(ノンフィクションライター 藤江直人)

運命のルヴァンカップ準決勝で
PK戦に若手を3人も大抜擢

 周囲からは大胆不敵に映り、最大級の驚きを持って受け止められるオーダーも、湘南ベルマーレにとっては必然だった。ただでさえ、緊張と重圧が交錯するPK戦。しかも、クラブ史上で初めてとなる決勝進出がかかる舞台となれば経験豊富なベテランでも足が震え、立ちすくんだとしても不思議ではない。

 しかし、ベルマーレを率いる曹貴裁(チョウ・キジェ)監督にいっさいの迷いはなかった。クラブ史上で最長となる7シーズン目を迎えている49歳の指揮官は、天国か地獄かの分かれ道となるPK戦に臨む選手たちの順番を自ら指名しながら、胸中に確信に近い思いを抱いていた。「勝ったな」と。

 敵地での第1戦を1-1で引き分けた柏レイソルを、ホームのShonan BMWスタジアム平塚に迎えた今月14日のYBCルヴァンカップ準決勝第2戦。1-1のまま90分間を終えた熱戦は、15分ハーフの延長戦でもともに1点ずつを取り合い、運命のPK戦へともつれ込んだ。

 スタッフを含めた全員で円陣を組む前に、曹監督は口頭でオーダーを伝えた。真っ先に名前を呼ばれた高卒2年目の20歳、東京オリンピック世代のDF杉岡大暉(市立船橋卒)は泰然自若としていた。

「天皇杯でも1番手で蹴っていたので、あまり緊張しませんでした」

 PK戦の末にV・ファーレン長崎を退けた、7月の天皇杯全日本サッカー選手権3回戦。この時も切り込み隊長役を担い、しっかりと成功させた残像がホープに自信と落ち着きを与えていた。同じ図式は26歳のFW山崎凌吾、31歳のMF梅崎司に続く4番手に指名された、23歳のDF坂圭祐にも当てはまった。

「僕も天皇杯で一度蹴っているので、あるかな、と若干思っていました」