スマートハウスを普及させるには
業界の壁を越えた 幅広い知識を持った
人材が不可欠だ。

プログラミング必修化が
普及を後押しする

 しかし、残念ながら日本の家電メーカーが提案したスマートハウスは普及しなかった。

「技術面の問題というよりも、自社が開発した規格や製品で囲い込もうとしたことが失敗の原因です。A社のスマートハウスでは、A社のエアコンやテレビ、照明システムしか使えないというのでは、普及しようがありません。相互のネットワーク接続を可能とするAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を公開し、他メーカーの機器も受け入れるなど、オープンな環境づくりをすべきでした」(坂村教授)

 だが、ここに来てスマートハウスの普及がようやく本格的に始まろうとしている。きっかけとなったのは、米IT大手などの主導で急速に普及しているAIスピーカーだ。

「AIスピーカーは最初からAPIを公開しており、さまざまな機器をネットワークにつなげられるだけでなく、ちょっとしたプログラミングの知識があれば、ユーザーが自分自身で家の機器をAIスピーカーに連携させることもできます。義務教育でプログラミングを学び、家のリフォームや修繕はDIY(ドゥ・イット・ユアセルフ)が当たり前の米国人にとって、暮らしのスマート化は、手軽にできる取り組みなのです」

 坂村教授は、やがて日本でも個人が手軽にスマート化した暮らしを実現する時代がやって来るとみる。「日本でも2020年度から小学校でプログラミング教育が必修化されます。これによってプログラミング知識を持った若者が増えれば、簡単な自動化や遠隔操作の仕組みは自分で作ろうという動きが広がるはずです。そこまでカジュアルになれば、スマートハウスの普及は急速に進むことでしょう」

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