エネルギー問題や少子・高齢化などの諸問題を、”住まい”と”暮らし”の観点から解決する切り口として注目されているスマートハウス。一般財団法人 家電製品協会は、 その普及に向けた人材育成のため、
「スマートマスター」という資格制度を新設した。スマートハウスの将来や、普及を担う人材に求められる能力などについて、東洋大学情報連携学部学部長の坂村健氏に聞いた。
古くて新しい
スマートハウスの概念
INIAD(東洋大学情報連携学部)学部長、東京大学名誉教授、YRPユビキタス・ネットワーキング研究所長。工学博士。1951年東京都生まれ。1984年からオープンなコンピューターアーキテクチャ「TRON」を構築。携帯電話などの組込OSとして世界中で多数使われている。IoT社会実現のための研究を推進。2003年紫綬褒章、2006年日本学士院賞受賞。『ユビキタスとは何か』『コンピューターがネットと出会ったら』『オープンIoT考え方と実践』など著書多数。
“課題先進国”といわれる日本。中でも急速に進む少子・高齢化は、医療・介護予算の膨張や独居老人の増加など、他の国が経験してない段階に入ろうとしている。
一方、産業や生活を支えるエネルギーの大半を石油や天然ガスなどの化石燃料に依存し、その大部分を輸入に頼っているわが国にとって、エネルギー問題は終わりなき課題だ。
これらの問題を“住まい”と“暮らし”という観点から解決する切り口となるのが「スマートハウス」である。
スマートハウスの定義はさまざまだが、家電製品協会では、①省エネルギーな“住まい”(高気密・高断熱、HEMS[ホーム・エネルギー・マネジメント・システム]による制御、太陽光発電・エネファーム・蓄電池などを備えた家)、②安全・安心・快適な“暮らし”(家電機器、住設機器などと、IoT、AI、クラウド、ビッグデータ、ロボットなどによる付加価値を備えた暮らし)と定めている。
②は、スマートフォンやタブレットなどのスマートデバイスを使って、外出先からエアコンのスイッチを入れたり、AIがあらかじめ学習させておいたプログラムに沿って、室内の温度や湿度を自動的に制御したりするイメージだ。AIやIoTの進化によって、こうしたサービスはかなり実現された。
「システムやネットワークによって家電を制御するという考え方は、特に目新しいものではありません。日本では、すでに数十年前から大手家電メーカーなどが、現在のスマートハウスと同様の“ネットワーク化された家”を提案してきたのです」と、坂村健教授は説明する。