スマートハウスの
普及に向けた資格制度
ただし、スマートハウスを構成する家電機器や住設機器は多岐にわたる。
それらの技術を巧みにすり合わせ、全体最適化されたスマートハウスを実現するには、住宅やエネルギー、家電・住設、IoT・AIなど、関連業界をまたがる知識・経験を横断的に習得したプロの手を借りることも有用だ。
家電製品協会はそうしたニーズに応え、スマートハウス普及に向けたプロ人材を育成する資格制度「スマートマスター」を新設した(下のコラム参照)。
わが国には、住まいづくりのプロセスを構成するそれぞれの業界のプロは存在するが、業界横断的な知識を持つプロは、今のところ皆無に等しい。そうしたプロを育成し、スマートハウスの普及を後押しするのが資格制度新設の狙いである。
坂村教授は、「より安全・安心で快適な暮らしや、省エネルギーの住まいを手に入れるためには、専門的な知識を備えたプロの知見があると、効率的に実現できる。スマートハウスの普及が進めば進むほど、DIYは面倒なので全部任せたいという高齢者などのユーザーは増えますから、サポートしてくれるプロの存在が重要になります」と語る。
人々の価値観やライフスタイルの多様化とともに、スマートハウスへのニーズも千差万別となっていくことだろう。
「テクノロジーが進歩すればするほど、生き方やライフスタイルの自由度は増していきます。ユーザーごとの好みやこだわりに柔軟に対応できるようにするためにも、間口の広さを持った専門家がいることも大事でしょう」(坂村教授)
また坂村教授は、「スマートマスターには、住まいづくりのプロセスに関わる広範な知識を学ぶことに加えて、プログラミングの知識も習得してもらいたいですね。なぜなら、それが機器をネットワークに接続させるための基本だからです」とアドバイスした。
■「スマートマスター」とは?
今後普及が進んでいくことが期待されるスマートハウスに対応した幅広い知識を持った人材であることを認定する資格が、スマートマスターである。
スマートハウスでは、IoT技術を駆使することにより、住宅メーカーをはじめ電力・ガスなどのエネルギー供給事業者、電機メーカー、住宅設備事業者、通信事業者など、さまざまな事業者が、それぞれの技術や製品、サービスを提供していく。その中で、スマートマスターは消費者との接点として体系的、かつ業界横断的な知識を持つ人材として消費者を支援する。
スマートハウスのプロフェッショナルとして、家の構造・性能に関する知識を持ち、家電製品から住宅設備、エネルギーマネジメントなどに関する技術や商品の動向を理解し、さまざまな製品やサービスを組み合わせる横断的な知識を持って、消費者個々のニーズに合ったスマートハウスの構築を支援する資格だ。
一般財団法人 家電製品協会がこのほど新設した資格制度では、スマートマスターを育成し認定するために、育成カリキュラムや学習テキストの提供、認定資格試験の実施、資格取得後の継続学習の支援などが準備されている。
同協会は「スマートマスター」資格制度の導入・推進を通じて、IoT時代をリードする人材を育成し、スマートハウスが生み出す環境メリットと家庭生活上のメリットを、社会と消費者が十分に享受できるようにサポートしていく方針だ。
一般財団法人 家電製品協会 https://www.aeha.or.jp/nintei-center/lp_smartmaster/