東京2020大会の後に
コカ・コーラ社が残そうとしているもの
「多様な国から多様な人々が集まり多様な競技が繰り広げられる。それがオリンピック・パラリンピック競技大会です。その多様性は、まさしく200ヵ国以上でビジネスをしているコカ・コーラ社のお客様や製品ラインアップと合致しています」
そう話すのは、同社で東京2020年オリンピックゼネラルマネジャーを務める高橋オリバー氏である。日本はコカ・コーラ社の中でも世界でも群を抜いて多様な製品ラインアップを取り揃えていると高橋氏は説明する。
「日本で展開している製品は、およそ50ブランド800製品に上ります。その中には、コカ・コーラ社の製品という認知度が低いブランドもあります。オリンピック・パラリンピック競技大会は、幅広い方々に私たちの製品ブランドに接していただくまたとない機会であると考えています」
オリンピック・パラリンピック競技大会はブランドをアピールする重要な機会であることは間違いない。しかし、それは長くオリンピックを支援してきた理由の一つにすぎないという。
「私たちは、東京2020大会で残すべきレガシーを、明確な目標として掲げています。これが、私たちが東京2020大会に取り組むことの意義であり、パートナーシップを90年間以上にわたり続けられた理由でもあります」
オリンピックでは、未来に残すポジティブな遺産を「オリンピック・レガシー」として大会ごとに定めているが、それと同様に、コカ・コーラ社は企業としての目標を掲げているという。今回、同社が東京2020大会に向けて設定したレガシーの方向性は次の3つだ。
① いつでもどこでも手に入れられる幅広い製品ラインアップの提供
② サステナビリティ活動の推進
③ オリンピック・パラリンピックならではの記憶に残る特別な体験の提供
①は製品ブランドを知ってもらい、幅広い選択肢の中から顧客に選ばれる存在になるという飲料メーカーとしての意図はわかるものの、②と③については事業に直接的に結びつくものではない。重要なことは、レガシーに対して明確にKPI(業績評価指標)が定められていることだ。
「KPIの具体的な内容は外部には公表していませんが、例えば、サステナビリティのKPIは、全世界で定めた、2030年までに販売した量と同等量のボトルと缶の100%相当分の回収・リサイクルを推進するという目標と連動しています。KPIは短期に達成されるものであるとは考えていません。10年後、20年後になって東京2020大会での取り組みを振り返ったときに、確かに意味があったと考えられる。そのような設定の仕方をしています」