スポーツイベントを支援する企業に求められる姿勢とは

──コカ・コーラ社が90年以上にわたってオリンピックを支援し続ける理由

1000人以上にも及ぶ
チームをまとめる仕組みとは

スポーツイベントを支援する企業に求められる姿勢とは
高橋オリバー氏。1970年ドイツ生まれ。2002年よりFIFA(国際サッカー連盟)でマーケティング・アライアンス・ディレクターを務めた後、イベントやプロモーション戦略の開発を含む事業のトップに就任。2010年からFIFAにおける全イベントの事業会社系子会社の責任者に。 その後、ナイキジャパンのシニア・ディレクターを経て、2016年より現職。

 しかし、日常の業務において目標達成に取り組む一般社員にとって、レガシーと日々のビジネスの目標との距離感を適切に捉えることは難しいはずだ。もっとオリンピックを売り上げに直結する手段とすべきでは──。そんな不満が湧いても不思議ではない。
 「レガシーを残していくことの意味は何か。その意識の共有に、私たちは半年以上の時間をかけました。その間、マネジメントサイドと、取引先に近い現場サイドの両方でブレインストーミングのセッションを行い、それぞれの立場からオリンピックに対する考えやアイデアなどを出してもらいました。レガシーの3つの方向性はそうしたプロセスを経て作られたものなのです」
 ボトムアップによる意識共有の仕組みがあり、一方にはトップダウンのコミュニケーションの仕組みもある。社内の全方位に向けてオリンピックに関わる意義が共有される仕組みが整えられていること。それが、コカ・コーラ社が90年以上の長きにわたってワールドワイドパートナーであり続けることができた一つの大きな理由である。
 「開催国が決まると、その国のコカ・コーラ社内にオリンピックチームが結成され、前大会の視察を行います。さらに前大会のチームは、取り組みの内容や反省点などを次の大会のチームに詳細にレポートします。私たちも今回のレガシーを作るに当たって、2016年のリオデジャネイロ大会のチームからのレポートを参照しました」
 コカ・コーラ社では、大会期間中には1000人以上から成るオリンピック・パラリンピックチームが活動することになる。チームの中にマーケティング、人事、広報などの各機能があり、そのメンバーによって2020年までの行動の緻密な計画が立てられることになる。そして組織体制の整備も、責任あるパートナーシップの遂行には欠かせないということだ。

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