累計3300万句の「新俳句大賞」
横田 1989年は松尾芭蕉の奥の細道の旅立ちから300周年で、その前年には俵万智さんの『サラダ記念日』がヒットして、俳句や短歌が非常にブームだったんですね。我々は「お~いお茶」という名前にして、もっと深くお客さまとコミュニケーションしたいと思っていました。そんな時、新俳句大賞を思いつき、受賞作品をパッケージに掲載しようということで始まったんです。
春香 パッケージでコミュニケーションして親しみを持ってもらおうというわけですね。
横田 はい、新俳句大賞は垣根を低くして、多くの人に楽しんでもらいたいと考えています。季語にもこだわらず、多少の字余りや字足らずもOK。感じたこと、思ったことを五七五のリズムに乗せて自由に表現してほしい。だから俳句ではなくて「新俳句」なんです。お茶が急須から缶やペットボトルへと、ライフスタイルに合わせて変わっていくように、俳句も新しい形で次世代につなげていきたいという想いもあります。
春香 これは今の時代らしい一句です。「本をよむ となりで ママはメールよむ」。7歳の子の作品です。一方で、こちらは80代の方。「さん付けで ひ孫に呼ばれ 秋の風」。本当に年齢を問わず幅広く親しまれているんですね。応募数はどれくらいですか?
横田 第1回での応募句数は4万句くらいでしたが、2017年度には未就学児童から100歳以上の方まで195万句の応募がありました。毎年11月から2月末までが応募期間なので、4ヶ月の間でこの数字です。これまでの累計だと、3300万句を超えますね。
春香 えー!すごいですね。
武田 俳句の歴史の中で、累計3300万句も集めたものは、おそらく例がないでしょうね。
横田 応募作品の中にはこんな句もあります。「教頭が スルメをひとつ 買っていた」。絵が浮かびますよね。この句、審査会でもいろんな解釈が出ておもしろかったんです。
武田 すごいですね、高校生の部の大賞をとっていますね。
横田 応募作品のうち、毎年5000句が佳作として選ばれて、入賞の2000句がパッケージに掲載されます。帝国ホテルで表彰式もしているんですよ。
春香 それがもう28年も続いているんですね。
武田 市場に出ている商品を通したコミュニケーションですよね。このアイデアがルートセールスの体験から得た「たくさんのお客さまとコミュニケーションしたい」という気持ちから来たものだとしたら、ちょっと感動してしまいます。
横田 そうですね。いろいろな方の想いを集めていきたいと思っています。お~いお茶と新俳句大賞はもう、切っても切り離せないものです。日本の文化がここにつながっていると思いますし、だからこそ海外の方にも知ってもらいたいですね。実際、英語俳句の部もあって、海外の方の応募も多いんですよ。