お茶文化を発信するティーテイスター
春香 今、伊藤園さんが積極的に取り組んでいることはありますか?
横田 最近特に力を入れていることは、お茶の文化の発信です。
春香 お茶文化の発信?
横田 伊藤園の社内には「ティーテイスター」という資格があります。3級から1級まであって、3級は緑茶、2級になるとそれにウーロン茶と紅茶が加わり、1級になると茶道、お抹茶です。テイスティングをしたり、文化や歴史も学びます。お客さまにしっかり説明できるように勉強するんです。例えば、同じお茶の葉でも、温度によって味わいが変わります。低い温度で淹れるとうま味が出ますし、渋めのお茶できりっとしたい時は高温で淹れるといいんです。
春香 おもしろい。もっと知りたくなりますね。一般の人も受けられる講座なんですか?
横田 社内の研修なのですが、20年以上にわたって常にお茶の啓蒙活動をしているということで、今回初めて厚生労働省からも認定されました。
春香 社内資格なのに厚生労働省認定とは、すごいですね。
横田 この資格を活かして、各地でおいしいお茶の淹れ方セミナーもやっています。最近、急須でお茶を淹れることは少なくなっていますよね。ペットボトルのお茶も飲んでいただきたいですが、やはり急須で淹れたお茶のおいしさも伝えていきたいので。
春香 なるほど、おもてなしの精神を学ぶことにもつながるんですね。
横田 茶の湯の一期一会の世界ですよね。日本人として、目の前にいるお客さまにおいしいお茶を淹れて差し上げたいという気持ちは、ずっと大切にしていきたいです。
西海岸では「クリエイティブな飲み物」
武田 伊藤園さんは海外展開にも力を入れていらっしゃるんですね。
横田 ええ。最初はハワイから始まって、北米はニューヨークに拠点があります。アジアでも、中国、台湾、タイ、シンガポール、インドネシアなどでお茶を売り始めています。アメリカでは、今シリコンバレーのIT企業の方に「お~いお茶」がけっこう飲まれているんです。緑茶を飲むという行為がクールとされているようです。
春香 へえ!IT企業の方たちが。
横田 はい。「クリエイティブサポートドリンク」と呼ばれています。IT企業のエンジニアの方などは、昼から夜まで長時間働かれます。そんな時にはやはり無糖のお茶のほうがヘルシーですし、飲むとスッキリしますよね。だから社員食堂の冷蔵庫に大量にストックされているんです。大変好評いただいています。
春香 日本のお茶の間から始まったイメージが、シリコンバレーでクールになるとは、ギャップがおもしろいです。パッケージの「お~いお茶」という日本語の文字はそのままなんですか?
横田 ええ。日本語の「お~いお茶」の文字もクールなんですね。こうやって日本の文化が海外で好まれると嬉しいですよね。だからもっと飲んでもらえるようにしていきたいです。
春香 海外での市場を拡大するのに大変な部分はありますか?
横田 お茶は農産物なので、まずは品質の良い原料を確保することですね。あと、やはり国によって食文化、生活文化が違いますので、その国に合わせた売り方、おいしさを追求していく必要があります。
世界のティーカンパニーになる
春香 最後に皆さんにお伺いしている質問です。100年後の未来、伊藤園はどんな会社になっていると思いますか?または、どんな会社になっていてほしいですか?
横田 伊藤園が目指す将来の姿は「世界のティーカンパニー」です。日本をはじめとして、世界中をお茶で笑顔にしていきたいと考えています。お茶は健康面、例えば肥満といった課題に対しても効果的です。さらに、お茶はコミュニケーションツールにもなるので、その場をなごやかにしたり、会話を引き出すこともできる。お茶をお届けすることで、世界に貢献していきたいですね。
武田 フロンティアスピリットは今、世界に向いているわけですね。
横田 そうですね。100年後なので、100ヶ国くらいで「お~いお茶」が飲まれているといいなと思います。お茶を通じて人の輪、コミュニケーションを深めていくことができたら幸せです。
【会社情報】
株式会社伊藤園
ITOEN,LTD.
創業=1966年
資本金=199億1230万円
従業員数=5331名(2017年10月時点)現在の主な事業内容=茶葉および飲料の製造・販売