踊れ! 話はそれからだ。
〜セッション1<地域×サービス>
最初のセッションには、地域で多様なサービスに取り組む経営者4人が登壇。中でも聴衆の度肝を抜いたのはコスプレで登場した勝瀬博則氏だ。
氏はホテル向けの無料レンタルスマートフォン事業を手がけるhandy Japan社のCEOであり、本業とは別に愛知県豊田市で両親が所有する古民家を、ゲストハウス「ザ ニンジャ マンション」として生まれ変わらせている。成功のポイントは、高齢の両親が無理なく運営できるよう「おもてなし」をギリギリまで省いたこと。それがかえって古民家の魅力を際立たせ、外国人観光客の予約の絶えない人気の宿になったのだ。
リソースの少ない地域でサービスを継続するには「捨てる発想」が大切だ。逆にいえば、地方でビジネスを成立させるにはビジネスモデルを極限まで尖らせる必要があり、だからこそ本質的なサービスが生まれやすいともいえる。
写真左からモデレータのの角氏、パネリストの長井伸晃氏(神戸市企画調整局産学連携課担当係長)、下村祐貴子氏(フェイスブックジャパン株式会社 執行役員 広報統括)、勝瀬博則氏(handy Japan株式会社 CEO)、近藤洋祐氏(株式会社電脳交通 代表取締役)、田村慎吾氏(関西電力株式会社 経営企画室 イノベーション推進G マネジャー)
勝瀬氏は「ビジネスをドライブさせるキーマンをどうやって見つけるか」という問いにも鮮やかな解を示した。ヒントとして画面に映し出された動画の中には、群衆の中で楽しそうに踊る男がひとり。最初は「変な人」として周囲から浮いているが、やがてギャラリーの中から一緒に踊る者が現れる。さらに踊り続けていると、ひとり、またひとりと踊る人が増え、ある閾値を超えたとき、場の全員が踊り出すのだ。
勝瀬氏はいう。「踊っている人が楽しそうなら、人は勝手にジョインする。自分から踊ってくれる人、それがキーマンです。リーダーはキーマンを探してはいけない。とにかく踊るのです!」
地域にもっとお金を!
〜セッション2<地域経済>
セッション2のテーマは地域経済。巨大プレーヤーに翻弄されて活力を失いがちな地域経済を、どうすれば健全化できるのか──。
この難問に取り組んだ好例が、飛騨信用組合の「さるぼぼコイン」だ。これはスマホアプリを使った飛騨地域限定の電子マネーで、現在、市内事業者の15%以上に導入されている。地域密着型の小規模店舗での導入率が高いことから、50〜60代の女性を中心に活発に使われており、地域経済の活性化に一役買っている。今では全国的に注目されている取り組みだが、同組合の古里圭史氏は、当初は反対が多く導入に苦労したと語る。
株式会社ネットプロテクションズは、eコマースでクレジットカード以外の決済方法として、商品を受け取った後に現金で決済できる「NP後払い」を広く普及させた事業者だ。今や年間1200万人が使うサービスに成長しているが、同社執行役員の秋山瞬氏は「サービス立ち上げ当初は『クレジットカードがあるのに、今さら現金決済なんてニーズがない』という否定的意見が多かった」と話す。
しかし実際には、商品を直接見ることができないeコマースでクレジットカードを使うことに抵抗のある人は少なくない。NP後払いのメインユーザーは、さるぼぼコインと同じく30〜50代の女性だというが、まさにその層に潜在するニーズをすくい上げたことが普及の大きなポイントだろう。「東京で働く男性」の視点だけでは見逃されがちな部分にまだまだ大きなニーズが隠れているのだ。
また、地方にお金を回す新しい仕組みとして注目されているのがクラウドファンディングだ。株式会社マクアケの坊垣佳奈氏からは、地域の文化や心理に寄り添いながら新しい仕組みを導入する工夫が語られた。
写真左からモデレータのクロサカ タツヤ氏(株式会社企代表取締役)、パネリストの境真良氏(国際大学グローバルコミュニケーション研究所客員研究員)、秋山瞬氏(株式会社ネットプロテクションズ 執行役員)、坊垣佳奈氏(株式会社マクアケ 取締役)、古里圭史氏(飛騨信用組合 常務理事 総務部長)