市民所得という名で4月からスタートしたイタリア版ベーシックインカムは、その給付対象者を失業者や貧困者に限定しているという点で、就労の意思や収入・資産に関係なく全ての個人に一定額が支払われるベーシックインカムよりも、失業手当の拡充に近い。
「クオータ100」と呼ばれる年金受給年齢の引き下げ措置も、4月からスタートしている。この措置により、2021年までに67歳以上へ引き上げられる予定であった受給開始年齢は、62歳に引き下げられた(ただし38年以上の勤労期間が必要)。11万人以上がこの制度の適用を申し込み、なかには駆け込みで3月末に退職した者もいたという。
イタリア経済財務省が19年4月に発表した『経済財政文書』によると、市民所得とクオータ100を中心とするバラマキ政策に伴う財政負担は、19年から21年の3年間で約1330億ユーロ(約16兆円)とGDPの3%弱に相当する。巨額の支出増が見込まれる一方で、その財源には確たる当てがないのが実情である。
バラマキ政策は投資と
労働の面から経済に悪影響
金融市場は、コンテ政権によるバラマキ政策を厳しく評価している。イタリアの長期金利は18年3月の総選挙でM5Sが大勝したことを受け、2%前後から3%台半ばまで急騰した。その後は2%台半ばまで低下したものの、ドイツの長期金利との差は3%ポイント近くまで拡大し、フランスやスペインよりも差が大きい。
こうした金利の上昇は、まず設備投資の重荷になったようだ。18年前半まで比較的堅調に推移していたイタリアの設備投資は、コンテ政権が成立した後の18年後半には前年割れに陥るなど、腰折れしてしまった。世界景気の減速や米中摩擦の激化などの影響が色濃いが、金利高による資金調達コストの増加も設備投資の悪化につながった。
そもそも企業は、コンテ政権によるバラマキ政策に対して不信感を募らせており、マインドを悪化させている。先行き不透明感も濃く、設備投資を手控える動きに拍車をかけている。コストとマインドの両面で、コンテ政権によるバラマキ政策はイタリアの設備投資のブレーキとして働いたことになる。



