イタリアに迫る危機、バラマキで国を疲弊させるポピュリズムの実態
イタリアのコンテ政権によるバラマキ政策の強化は、景気を加速させるどころか国を疲弊させている(写真はイメージです) Photo:PIXTA

長びく景気低迷や、厳しい財政緊縮に対する有権者の不満を吸収する形で誕生したイタリアのコンテ政権は、その公約通りバラマキ政策を強化した。しかしそのバラマキ政策は、景気を加速させるどころか、設備投資の悪化や銀行の経営環境の悪化につながり、経済の成長力を弱めるという本末転倒な結果をもたらしている。(三菱UFJリサーチ&コンサルティング 調査本部 研究員 土田陽介)

芳しくないコンテ政権による
バラマキ政策の評価

 2018年6月1日に発足したイタリアのコンテ政権は、財政拡大(バラマキ)志向が非常に強い。同政権は左派色が強い五つ星運動党(M5S)と右派色が強い同盟党(旧北部同盟)という、性格の異なる2つのポピュリスト政党が連立を組んで誕生した。両党ともバラマキ色が強い公約を掲げ、その実現のために拡張的な19年度の予算案を計画した。

 その結果、欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会との間で対立が生じ、18年秋には欧州委員会がイタリア政府に対して過剰財政手続き(EDP)と呼ばれる制裁手続きを発動する意向を示したが、イタリア政府が当初案より財政赤字幅を縮小させた修正予算案を提出したため、土壇場で回避された。

 筆者は19年5月中旬にイタリア経済の中心地である都市・ミラノを訪問し、複数の有識者に対してコンテ政権による経済運営の現状に関するヒアリング調査を行った。その際、4月から本格化したコンテ政権によるバラマキ政策は、景気の加速につながらないばかりか、イタリア経済に悪影響を及ぼしているという意見が多く聞かれた。

 コンテ政権によるバラマキ政策の中心となっているのが、通称「市民所得」と呼ばれるイタリア版ベーシックインカム(最低所得制度)の導入と、「クオータ100」と呼ばれる年金受給年齢の引き下げの2つだ。これらは18年3月の総選挙で第一党になったM5Sが掲げた公約に基づいている。