また、コンテ政権によるバラマキ政策を嫌気した金利の上昇で国債の評価損が生じ、さらに金融市場での資金調達コストも増加した。収益と費用の両面で、コンテ政権によるバラマキ政策は銀行の経営を圧迫している。イタリアの企業は銀行からの資金調達に依存しているため、銀行の経営不安は企業の資金繰りの悪化につながる恐れがある。

ポピュリストの戦略なき財政拡大
イタリア経済に忍び寄る危機

 コンテ政権による財政出動は、有権者の信認を得たいポピュリスト政党の下で行われる典型的なバラマキ政策だ。特にクオータ100は、年金制度そのものの破綻を早めてしまう恐れがあると同時に、コンテ政権以前の政権が心血を注いで進めてきた構造改革路線を完全に覆す「愚策」に他ならない。

 さらに事態を複雑にしているのが、コンテ政権によるバラマキ政策がM5Sと同盟の主導権争いに密接に関係していることだ。政権発足当初はM5Sの支持率の方が高かったが、19年に入ると同盟の支持率が逆転しており、19年5月に行われた欧州議会選でもM5Sが議席を減らした一方で同盟は躍進した。

 そのため、M5Sから主導権を奪いたい同盟が、20年度以降の予算でフラットタックスの拡充など、さらにバラマキ色の強い政策を打ち出してくる可能性が高まっている。あるいはM5Sを政権から排除しようと、同盟党首のサルヴィーニ副首相がコンテ首相を懐柔し、解散総選挙を決断させるかもしれない情勢になっている。

 当然、こうした政治リスクの高まりは実体と金融の両面でイタリア景気をさらに下押しさせることになる。欧州委員会は、再びEDPの発動を盾にコンテ政権へバラマキ政策の見直しに向けた圧力をかけているが、それが政権与党間で主導権争いが繰り広げられる現状のイタリアに対して有効に働くか、定かではない。

 このように、コンテ政権によるバラマキ政策は、ポピュリスト政党による戦略なき財政拡大の典型といえる。反EUを唱える各国のポピュリスト政党は、多かれ少なかれM5Sと同盟のようなバラマキ政策の実施を公約に掲げている。ただ、バラマキ政策は景気の拡大につながらず、むしろ経済の悪化につながることを、イタリアは体現している。

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