欧州議会選挙で
ポピュリズム政党が勢力を拡大
5月23~26日に欧州連合(EU)に加盟する28ヵ国で行われた欧州議会選挙は、大衆迎合主義(ポピュリズム)や権威主義的な政党が各国で勢力を拡大した。
イタリアとフランスでは移民の受け入れに批判的な右派系のポピュリズム政党が第1党となり、英国ではEUからの離脱実現を目指す結党間もないブレグジット党が圧倒的な勝利を収めた。ハンガリーやポーランドでは、国家運営を巡ってEUとの対立を繰り返す政権与党が他党を圧倒した。
これまで常にEU運営の中心にいた中道右派の欧州人民党(EPP)と中道左派の社会民主進歩同盟(S&D)の2大会派は、そろって改選前から大幅に議席を落とし、両会派の合計議席でも初めて議会の過半数を失った。
英国が2016年の国民投票でEUからの離脱を選択した際には、英国に次ぐEU離脱国が現れ、EUの分裂や崩壊を不安視する声も高まった。ただ、その後の英国の離脱協議の混迷もあり、最近ではポピュリズム政党の多くがEUからの離脱を主張しなくなっている。
こうした政党の多くは、EU官僚(エリート)による誤った政策が、人々(大衆)の生活困窮や社会の混乱を招いているとして批判する。移民や難民の受け入れ制限、行き過ぎた財政緊縮路線の見直し、イスラムによるキリスト教社会への脅威などを訴え、現状に不満を抱える世論の支持を集めている。欧州議会でのプレゼンス拡大を足がかりに、EUを内から壊そうとするのが、ポピュリストたちの新たな戦略だ。
極右政党と位置づけられてきたポピュリズム政党の多くが、少なくとも表向きは排外主義や反ユダヤ主義を封印し、あたかも普通の政党のように振る舞っているのには危うさを覚える。
極右を連想させる党のシンボルマークや党名を変更し、ソーシャル・メディアを駆使し、若く清潔な身なりの党首が軽妙に政策を語り、支持を呼びかける。有権者の多くは自身が差別主義者ではないと主張し、政治エリートへの不信感と変化への期待感からポピュリストに投票する。