大切なのはハードではなく、どれだけ感動を与えられるか
夜光塗料を塗った紙を丸く切り抜いて星座の形に貼り、天井から床までプラネタリウムのようにしたのが9歳の時。10歳の時には、子ども向け科学雑誌の付録に改良を加え、緯度を変えられる卓上ピンホール式プラネタリウムを製作した。
「厚紙にピンで穴を開け、電球の光を通して星を映し出すという単純なものでしたが、当時の自分としてはあまりにも良い出来だと思ったので、近所の友達や大人たちを部屋に招いて何度も鑑賞会を開きました。その時に『へえっ、すごいね~』とか『星空ってこんなにきれいなんだ』と楽しんでもらえたことが、今の仕事の喜びにつながっているのかもしれません」(大平氏)
投影できる星の数は飛躍的に増え、技術の進歩によってプラネタリウムの表現力は格段に豊かになった。
SUPER MEGASTAR-Ⅱ
2200万個の星を投影できるフラッグシップ機。13等星までの恒星、全てのメシエ天体を含む、140以上の星雲、星団、銀河が含まれており、双眼鏡でのぞけば、本物の夜空と見間違えるほどの精密さで、微細な星まで再現されている。
2200万個の星を投影できるフラッグシップ機。13等星までの恒星、全てのメシエ天体を含む、140以上の星雲、星団、銀河が含まれており、双眼鏡でのぞけば、本物の夜空と見間違えるほどの精密さで、微細な星まで再現されている。
しかし、「それはテレビがアナログから地上波デジタル、4K・8Kへと進化を遂げてきたのと同じで、あくまでもハード面の進化にすぎません。大切なのは、映し出される星空や映像によって、見る人たちにどんな感動体験を提供できるかだと思います」と大平氏は語る。
実は大平氏には、自身のプラネタリウム製作について「こんなことをして、いったい何になるんだ?」と悩んでいた時期がある。
「ギネス世界一に認定されたことなどでマスコミから賞賛され、世間から注目を集めましたが、プラネタリウムは車や家電などと違って、生活や仕事に直接役立つものではありません。そんな装置の性能や機能を極めることに、果たして何の意味があるのかという根本的な疑問を抱いてしまったのです」