昭和電工に2016年に設けられた融合製品開発研究所。所長と5人の副所長がいる「研究所」だが、副所長たちはそれぞれの技術分野を強くし、融合が必要なときに連携する“バーチャル”な組織だ。コングロマリットプレミアム実践のため、多岐にわたり分散する技術を融合させる実行部隊の5人の副所長に、融合製品開発研究所のミッションや求める成果について語ってもらった。
これまでにないものを
生み出すために「融合」の
取り組みが不可欠
──まず、融合製品開発研究所(以下、融合研)のミッションと設置の理由についてお聞かせください
副所長 蒲池晴美
担当:ガス・有機・高分子ブロック
農学博士(酵素化学)。1991年昭和電工入社。研究開発20年、萌芽的研究から製品開発まで、さまざまなフェーズのテーマに従事。その後、研究資源投資管理、技術系人材採用の企画・管理を経験し、2017年より現職。
近藤 少し前ですが、2006年に、当時の社長に、「人間力」を強調している真意を尋ねたことがあります。その答えが、「昭和電工は多岐にわたった技術を持つコングロマリット型の企業だが、それらの相乗効果を生み出せるかどうかは組織の壁を超えた人や情報の交わりに懸かっている」でした。融合研のミッションは、その言葉通り「コングロマリットプレミアム」を実践することにあります。
蒲池 昭和電工には石油化学、化学品、無機、アルミニウム、エレクトロニクスの分野で多くの製品があり、材料設計、合成反応、加工プロセスを掛け合わせれば膨大な組み合わせが可能になります。さらにそれらを計算科学や分析物性、安全試験などの各センターが共通基盤として支えています。
融合研は多くの拠点に分散したラボを統合したバーチャルな組織ですが、各分野を任されている私たち5人は、多様な技術分野をつないで融合を目指す「神経伝達物質」としての役割が期待されています。
──なぜ今、融合が求められているのでしょうか。
副所長 久幸晃二
担当:アルミニウムブロック
博士(工学)。2005年昭和電工入社。専門は金属組織学。前職は、大学にて環境に関する国プロでPD、その後鉄鋼メーカーに勤務。昭和電工入社後はアルミニウム技術センターにて開発業務に従事。その後、技術戦略室、研究開発部にて研究に関する企画・管理を経験。16年より現職。
久幸 次世代の技術や製品開発では、部分最適もさることながら「全体最適の提案ができるかどうか」が決め手であり、それは最終製品メーカーだけでなく、素材や部品メーカーである私たちにも同様に迫られている課題です。
近藤 従来は、お客様から「この素材や部品はOK」と言われれば完了でしたが、現在は、「なぜ、この素材や部品は良い結果が出てお客様の期待に応えられているのか」を理解して開発を進める時代になっています。
佐藤 材料や部品そのものだけでなくモジュールでの「評価」も含めてお客様に示す。言葉を換えればお客様が行うのと同じ評価ができた上で材料や部品を納められる体制が必要です。
武内 だからこそモジュール評価(電池の場合はセル評価)ができれば、材料の使い方まで一歩踏み込んだ提案をできるようになります。それが素材や部品が採用される重要な要因の一つになっており、これまでとは違うものを生み出すための「融合」が不可欠になってきています。