パワーデバイスで見せた融合の可能性と
飛躍力の高さ
──全社的なパワーにしていくためにはベンチマークとなる成果や成功例が必要です。
蒲池 まず成果として確認しておきたいのは、融合研が発足したことで「世の中にある課題」に気が付いたとき、それを異なる分野の技術者たちが合同で議論や検証できる「場」が明確になったことです。オープンイノベーションにおいても、まずは自社にある技術資源を融合させた上で、社外とのパートナーシップを構築すれば、自社の技術資源の戦略的な活用になりますし、社外パートナーにとってのわれわれの価値を最大化することにもなると考えます。
久幸 融合の最初の成果として先に述べたパワーデバイスへの取り組みが分かりやすいでしょう。昭和電工は、自動車用モーターや鉄道車両のインバーターモジュールなどに使われるパワー半導体では、SiCエピウエハーで世界最高レベルの品質を誇っています。一方、耐高温、耐高電圧、大電流特性などに優れたパワー半導体デバイスには、ウエハー以外の封止材や放熱材などの知見が必要。ここで融合研がデバイスのマルチマテリアル化を示しました。
佐藤 半導体の冷却に使うアルミの放熱カバーや放熱絶縁基板、有機系の封止材などですね。まさに昭和電工の総合力が投入されています。そこで重要なのが冒頭に申し上げた、お客様と同じ評価ができる技術なのです。
蒲池 私たちはお客様と同じ製品を作ろうというのではなく、同じ評価技術を持つことで次なる提案が可能と考えています。
久幸 全体最適を目指す基礎的な部分ですね。
そういう取り組みの結果として「お客様が何を嬉しがっているのかが分かる」という経験を多くの社員がすれば、R&Dは前向きなサイクルが加速します。