一つの会社で勤め上げることよりも
転職して自分が成長できる機会を選ぶ

CASE【3】 
古川裕樹さん(仮名・42歳)
新卒で玩具メーカーに入社。その後、外資系部品メーカー、大手エンジニアリング会社を経て、現在は大手電機メーカーに勤務。

「父親がエグゼクティブリサーチャー(ヘッドハンター)の仕事をしていたこともあり、最初から転職には全く抵抗感がありませんでした。20代のときから、いい条件でいい仕事ができるのであれば、いつでも転職しようと思っていましたし、今もそれは変わりません」

 そう話すのは、古川裕樹さん。実際、これまでに3回の転職を経験している。最初の会社は玩具メーカーだったが、そこで人事部に配属されたことを機に、転職後も一貫して人事畑を歩んできた。とはいえ、渡り歩いてきた会社は、すべてカラーが異なっているため、要求される仕事の内容も大きく違っていたという。

「最初の会社は典型的な日本企業という感じで、組織のサイズも小さかった。まだ社会人になりたてだったので、ここで基本的な社会勉強をさせてもらった感じです。ところが、いろいろ仕事を教えてもらった上司が会社を辞めてしまい、結果的に自分が実務を取り仕切るようなポジションになってしまった。もうここから先、ステップアップするのが難しいと感じ、2006年に転職を決めました」

 転職サイト経由で決めた次の会社は、外資系部品メーカー。ここで、グローバル人事に携わるようになる。

「人事の中でも最先端のことをやっている部署だったので、最初のうちは本当にいい経験ができました。ただ、徐々に関係のない業務が増えて、本来やりたい仕事に携わる機会が減ってしまったので、また転職を考えることに。それが30代半ばの頃です」

 次に入ったエンジニアリング会社は国内企業だが、海外にも多数の支社を展開する大企業。偶然、職場が自宅から徒歩圏内で、働きやすさは抜群だった。

「ここは本当にいい会社で、社内の雰囲気も待遇も抜群。途中で海外駐在の経験も積ませてもらいました。2011年から今年の春まで在籍していましたが、実は積極的に辞める理由は一つもなかったんです」

 しかし、前述のように「いい条件でいい仕事ができるのであれば、いつでも転職する」というのが古川さんのポリシー。

「そのため、積極的に転職の意向があったわけではないのですが、2017年ごろからビズリーチに登録はしていました。登録しておくと、企業やヘッドハンターの反応で、自分のスキルが市場でどれほど評価されるものなのかが分かるじゃないですか。すぐに転職する気がなくても、とりあえず登録だけして、自分の力量を測るというのもアリだと思います」

 そんなある日、ビズリーチからスカウトが届き、その内容に古川さんは強い関心を抱く。それが、今の会社に転職するきっかけになった。

「スカウトの文面を読んで、求人募集している会社の仕事内容が、自分にとって成長につながるものだと感じました。それで、ともかく先方に会ってみようと。これまでも、実際に転職にはつながっていませんが、スカウトを機に面接を受けたことは結構あって、そこで会社の雰囲気とか、企業風土みたいなものってある程度見えるんですよね。今の会社は、お試し感覚で受けた面接の段階で、業務内容だけでなく会社の雰囲気も自分に合うなと感じたので、転職を決めました」

 この転職で、年収は前職より10%程度アップ。職場は転職前より遠くなったものの、今の会社は自由な働き方が認められており、在宅勤務がしやすく、生まれたばかりの子どもを持つ古川さんにとって働きやすい環境が整っていたことも、転職して良かった点だ。

「もちろん、転職を繰り返していると、古参のメンバーに比べて人間関係が希薄になるとか、昇進や昇給のペースが落ちる部分もあるかもしれないですが、僕は同じ会社で勤め上げることがゴールだとは思っていない。転職は通過点だと思っているので、いろいろな経験を積んでスキルを磨けるかどうかを重視しています。今の会社で経験を積んだ後、そのスキルをさらに大きく伸ばせそうな会社が見つかれば、何歳になっても新天地で勝負してみたいですね」