――面白いですね。建設業界をしがらみから解き放ち、自由な人の流れを作っただけでなく、そこに一般の人たちをも招き入れた。一生に一度といえる大きな買い物だからこそ、家づくりを住宅会社に任せきりにするのはもったいない。その意味で、マドリーは理想の家づくりの実現を後押しするサービスだといえますね。
IT化が進めば、自然とあらゆる情報が広がり、人と人がつながっていく。僕らが解き放ったというよりは、時代の流れだと思います。ただ、人と人をダイレクトにつなげることで、ブラックボックス化した業界の課題を解決したいという思いはあります。これまでは、顧客にとっての分かりにくさ、つまり“情報の非対称性”を利用したビジネスが多かったのですが、情報を見える化、透明化すれば、従来の商習慣も大きく変わるはずです。
その地方にしかない強み
を生かす
――ところで、創業期から成長期に入っていくと、人も増え、今まで以上に求心力が重要になっていきます。みんなで目指すノーススター、すなわちミッションはありますか。
「建築のワクワクを全ての人に届ける」というのが僕らのミッションです。建設業界で働く人のワークスタイルをもっと豊かにし、地域や組織を超えて人々をつなげれば、ワクワクする空間が世界中に生まれると信じています。現在は社員8人の小さな会社ですが、ベンチャーキャピタルなどからの資金調達にも成功しましたので、これからマドリーの仕組みをもっと進化させるべく、エンジニアの増員を行うなど事業投資を着実に進めていきます。ただし組織の規模がどれだけ大きくなっても、このミッションは決してぶれることなく、全員でしっかりと共有していきます。
――2013年の起業から6年が経ちました。激動の創業期を経たからこそ、「起業家として生涯をかけて最も大事にすべきこと」は何だとお考えですか。
起業してみて痛感したのは、事業というのは「起こす」ことより、「続ける」ことが肝心だということです。スタートアップは常に挫折のリスクを背負っているので、なおさらです。心が折れないためにも、「このビジネスを広めて世の中を良くしたい」という熱い思いを、ずっと持ち続けていたいですね。
――最後に、創業の地である名古屋に対する思いを聞かせてください。
名古屋は、便利な上に居心地抜群です。田舎出身の私から見れば十分都会ですが、東京や大阪ほど大都市でスケールが大きくはなく、人も会社も密集し過ぎていないところがいいですね。いい意味で街が狭いというか、歩いていると必ずといっていいほど誰かに声をかけられるんですよ(笑)。
ちなみに地方でスタートアップを立ち上げる良さは、「その地方にしかない強み」を生かせることかもしれません。実は、愛知県の注文住宅着工件数は全国トップなんです。ニーズの高い場所で、建築系のクラウドソーシング事業をスタートできたことは、本当にラッキーでした。それに、名古屋のスタートアップは東京に比べるとまだまだ少ないので、その分注目されやすいというメリットもあります。おかげで投資家を含めて、当社はいろいろな方からご支援をいただいています。
また起業家個人としては、自分の前を歩いてきた先輩たちの存在に助けられることが多いですね。これから名古屋にもどんどんスタートアップが増え、「起業家が起業家を生むエコシステム」が生まれてほしい。私もそのエコシステムの一員として、名古屋を盛り上げていくお手伝いをしたい。そう思っています。
*当連載「GLOCAL HEROES」は、アメリカン・エキスプレスとダイヤモンド社との特別企画としてお届けしています。