「モノ」重視から「コト」重視へと時代が変化する中、知的財産という見えない資産をコアコンピタンス(競争力の源泉)とする企業が増えている。儲かるビジネスを構築するために、知的財産はどのようにマネタイズされるべきなのか? 知的財産戦略コンサルティングで多くの実績を持つ、正林国際特許商標事務所の正林真之所長に聞いた。
なぜ今、知的財産(以下、知財)なのか? 正林国際特許商標事務所の正林真之所長は、その理由をこう説明する。
「消費がモノからコトに変化し、特許の対象もモノからコトへ変化しています。つまり、従来の“アイデアでモノを製造する特許”から“場面や状況を設定してアイデアをどう使うかの特許”へ変化しているのです。それに伴って、知財の管理もより複雑化、高度化しています。つまり知財はこれまで以上に、経営戦略と連動し、その利活用が将来のビジネスの勝負を決める時代になってきたのです」
一般的に、商標や特許を取得するのは自社を守るためと考えがちだが、本来、知的財産権(以下、知財権)とは、自社の才能(アイデア)やその成果物をマネタイズ(資金化・現金化)する道具として、攻めにも使うことのできる極めて有用なものなのだ(図表1)。
逆に言えば、成功している企業には、必ずといっていいほど知財の活用がある。
とはいえ、日本企業では知財への意識はまだまだ低いという。例えばイノベーションを武器としている企業が多い東証マザーズ市場でも、上場企業の約半数は特許出願を行っていない(図表2)。これでは、持続的な競争優位の構築は難しくなってしまう。