DX時代に企業が生き残るためには
「ビジネス×アジャイル」が必要だ

変化が速く、不安定で、破壊的なプレーヤーが既存のビジネスを脅かす現代は、ビジネスのスピード(ビジネスアジリティー)が重要となる。伝統的な企業も自らの力で自社を変革させなくては生き残れない。変革を成し遂げるためには何が必要か? 欧米先進企業のDX最前線をよく知り、ビジネスフレームワークSAFeを提供するスケールド・アジャイルのクリス・ジェームス氏と、長年、国内外の企業へのテクノロジー導入を支援し、SAFe認定パートナーの一社となったTDCソフトの上條英樹氏が語り合った。

DX時代に企業が生き残るためには「ビジネス×アジャイル」が必要だビジネスフレームワークのSAFeを日本に導入するためのパートナーとして、スケールド・アジャイルはTDCソフトと提携した。左がスケールド・アジャイルスケールド・アジャイル チーフ エグゼクティブ オフィサーのクリス・ジェームス氏、右がTDCソフト 執行役員 SPC(SAFe Program Consultant)の上條英樹氏

 最先端のテクノロジーが、ビジネスを大きく変えている。例えばUberやAirbnbのように、既存のビジネスを破壊するような新規参入者が現れたとき、既存企業はどう戦えばいいか。こうした破壊的イノベーターとの市場競争に勝ち残るため、グローバル企業は必死で「デジタルトランスフォーメーション(DX)」に取り組んでいる。

 DXとは単なるデジタル化ではなく、会社の組織改革を含めて従来のビジネス全体を大きく変えることだ。そのため、企業規模が大きいほど変革の難易度は高くなる。「DX後進国」といわれる日本だが、企業は何から取り組めば良いのだろうか。海外の先進企業に追い付き、追い越すための武器になる方法論が、ビジネスフレームワーク「SAFe(Scaled Agile Framework)」である。

不確実な時代を企業が生き抜くためのビジネスフレームワーク、SAFe

TDCソフト上條英樹氏(以下、上條) 国内ではさまざまな産業でDXへの取り組みが活発化しています。特に伝統的な大企業が変革に取り組む際は、指針となるアジャイル(※1)やリーン(※2)の方法論が不可欠です。その重要性を踏まえ、2019年8月、私たちTDCソフトはスケールド・アジャイルとのパートナー契約を締結しました。ビジネスアジリティーの実現を目的とする欧米の先進企業が、スケールド・アジャイルが提供するビジネスフレームワーク、SAFeを採用しているからです。

 私たちがSAFeと出合ったのは産業技術大学院大学とエンタープライズアジャイルに関する共同研究を実施した17年のことでした。当時、日本のソフトウエア開発ではアジャイルが徐々に普及していたものの、大規模な成功事例がほとんどないことに問題意識を持ったのです。

 この研究でSAFeをエンタープライズアジャイルのためのものとして評価した理由は、ビジネスの課題解決に焦点を絞った唯一のフレームワークだからです。研究中、私は世界中の大企業がこぞってSAFeを導入していたことに大きな関心を持ちました。なぜ規模の大きい企業ほどSAFeをこぞって採用するのでしょうか。

※1 アジャイル…ソフトやシステムの開発手法の一つ。素早い、機敏な、という意味の通り、小さな単位でテストと実装を繰り返して開発を進めていく
※2 リーン…無駄がない、筋肉質な、という意味。トヨタの生産方式を元にアメリカで 提唱された「Lean Production System」(リーン手法)を指す

スケールド・アジャイルCEOクリス・ジェームス氏(以下、クリス) その質問に答えるには、現在のビジネス環境についての説明から始める必要があります。私たちは今、テクノロジーの急速な進歩により、非常に不安定で、不確実性が高く、複雑な状況に直面しています。これまでは規模の大きい企業が自分たちよりも規模の小さい企業を買収し、ビジネスを拡大させるのが当然でした。マイクロソフトやオラクルは、こうして現在の姿に成長してきたのです。

 ところがさまざまな産業で、規模は小さいながらも敏しょうな企業が、既存の業界秩序を壊す例が増えてきました。いってみれば、大きい魚が小さい魚を食べるのではなく、小さい魚が大きい魚を食べるようになったのです。従業員数十人の会社が、10億ドルの企業価値があると評価されることも珍しくありません。テクノロジーを活用することで、スタートアップはこれまで以上に早く成長できるようになりました。

 一方、既存の大企業がこのような新興勢力と戦うには、大きな困難を伴います。大企業が市場環境の変化に迅速に適応できる能力を獲得し、破壊的なプレーヤーとごして戦える武器を提供したい。そのために私たちスケールド・アジャイルは、SAFeを提供しているのです。

新着
特集
書籍
週刊ダイヤ
人気順