DX時代に企業が生き残るためには
「ビジネス×アジャイル」が必要だ

世界の先進企業のアジャイル導入事情

DX時代に企業が生き残るためには「ビジネス×アジャイル」が必要だ TDCソフト 執行役員 SPC(SAFe Program Consultant)
上條英樹氏

上條 世界全体で見ると、SAFeを採用している企業にはどんな特徴がありますか。

クリス 私たちのお客さまは製造業、小売、金融サービス、ヘルスケア、政府機関まで多岐にわたります。具体的にはフォーチュン100の70%の企業に加え、国土安全保障省やFBIなど全世界で2万社がSAFeを導入し、組織でのアジャイルの実践に取り組んできました。

 経済のグローバル化が進む中、破壊的プレーヤーに対抗しなくてはならない大企業は多くの課題を抱えています。変革の過程では、組織のマインドセットを変えることも必要です。私たちの挑戦は、エンタープライズアジャイルの方法論を世界中に広め、プロダクトの市場投入までの時間を短縮し、ビジネスの生産性を向上することにあります。SAFeは、その実現をサポートする実証済みの指針と参照可能なガイドラインを提供するものです。

上條 グローバルでは業種を問わず、規模の大きな組織が導入しているわけですね。では、地域別の導入状況はどうでしょうか。

クリス 現在、SAFeの導入が進んでいる国は、米国の他、英国、フランス、ドイツ、北欧諸国など。アジアではインドがリーダーですが、アジア市場への導入は現在進行形です。

世界の先進企業が使う方法論のルーツは日本

DX時代に企業が生き残るためには「ビジネス×アジャイル」が必要だScaled Agile(スケールド・アジャイル) チーフ エグゼクティブ オフィサー
クリス・ジェームス氏

上條 日本のエンタープライズアジャイルの導入を、どのように見ていますか。

クリス 日本でのSAFe導入はこれからですが、そもそもアジャイルやリーンのルーツはここ日本にあります。古くは1950年代に生まれたトヨタの「かんばん方式」や80年代の「シックスシグマ」が海を渡り、反復的に改善プロセスを繰り返すアジャイルやリーンが生まれたのです。

 アジャイルが生まれたのは00年代。10年頃から欧米の先進企業はさまざまな領域でエンタープライズアジャイルの実践を進めてきました。ソフトウエア開発ではいまだに60年代に生まれたウオーターフォール(※3)が主流である日本とは対照的です。私たちは少しでも多くの日本の大企業が、エンタープライズアジャイルの実践を始めることを望んでおり、SAFeはそのための方法論も提供しています。

※3 ウオーターフォール…ソフトやシステムの開発手法の一つ。要件定義→設計→プログラミング→テスト……というように工程を厳格に管理して進め、工程が後戻りしないのが特徴

上條 欧米先進企業と比べ、日本企業でエンタープライズアジャイルの導入が進まないのは、何が阻害要因になっているのでしょうか。

クリス 米国企業の場合、既存のビジネス秩序を破壊するプレーヤーの影響を受け、必死にDXに取り組んできた経験があるからだと思います。その取り組みは一段落し、現在は「ビジネスアジリティー」をいかに獲得するかにシフトしています。ビジネスアジリティーとは、マーケティング、人事、法務などのビジネスプロセスにアジャイルのアプローチを取り入れ、反復的にプロセスを改善していく取り組みです。過去5年間の米国企業のエンタープライズアジャイルの焦点はソフトウエア開発と運用の分野にありました。その知見を今度はビジネスプロセスの改善に生かそうというわけです。

 さらに注目は、米国企業のアジャイルの焦点が「プロジェクト」から「プロダクト」へ変化していることです。これは企業がプロダクトの提供を通して、顧客に提供する価値を最大化することに注力しようとしているからです。SAFe自体もこのトレンドを踏まえ、ソフトウエア開発のためのフレームワークから、ビジネスで使うフレームワークへと進化させてきました。現在の日本企業は、DXに集中していると思いますが、その後はより迅速にプロダクトを市場に投入する「Time to Market」の短縮に取り組まねばなりません。

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