服から服を生み出す――伊藤忠が新プロジェクト“RENU”を始めた理由

原料から衣料品まで。バリューチェーン全体を押さえているからRENUが可能になる

 伊藤忠商事・繊維カンパニーの強みは、RENUプロジェクトを「原料→紡績→織布・編立→縫製→マーケット」という繊維産業のバリューチェーン全体で展開できることにある。RENUの目的は、単にサステナブルな布や糸を販売するだけでなく、消費者の手に届くまでの商流全体を自社で抑えることで、サーキュラーエコノミー(廃棄を出さない経済循環の仕組み)の実現を目指しているのだ。

 同社では、アジア地域に原料・生地・縫製の一貫体制を構築し、世界各地に衣料品を供給している。RENUの再生ポリエステルも主に中国やアジアで紡績、織布・編立が行われ、ベトナムを中心とするASEAN諸国の協力工場で縫製し、最終製品となる。

「原料から製品までのバリューチェーンをグローバルに構築しているメリットの一つは、工程を分断することなく、最終製品まで一貫して携わることで、コスト競争力を高められることにあります。また、自社で調達した環境配慮型素材をブランディングし、グローバルブランドや最終ユーザーに直接その価値を訴求できることも大きな強みになっています」と清水氏は強調する。

 さらに傘下の事業会社等と連携し、製品化までの積極的な提案をアパレルやリテーラーに行っている。いくら環境に良い素材であっても、理念だけが先行し、「デザイン」「価格」「品質」などが伴わない製品ではマーケットに受け入れられない。多くのアパレルやブランドとの取引があり、市場のトレンドやニーズを押さえている伊藤忠商事では、消費者の視点、つまり「マーケットイン」の発想で環境配慮型素材の浸透を目指している。

服から服を生み出す――伊藤忠が新プロジェクト“RENU”を始めた理由繊維産業全体のバリューチェーン。通常は原料、生地、衣料品、販売など各過程をそれぞれ別の企業が行うが、繊維カンパニーではバリューチェーン全体を見ているために、マーケットからのニーズを原料や生地の開発に反映できる。
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