発売前の商品でもデータに基づく需要予測は可能
諦めない姿勢が新たな価値を生み出す

ソフトバンクとDataRobotによる特別対談

──それを受けた部門長などが成否の判断軸を決めて具体的な取り組みを回すという流れになるわけですね。

藤平大輔インキュデータ 代表取締役社長 兼 CEO 兼 ソフトバンク 法人事業統括 法人プロダクト&事業戦略本部 デジタルマーケティング事業統括部 統括部長
DAISUKE FUJIHIRA
ソニーを経て、2004年ソフトバンクBB(現・ソフトバンク)入社。福岡ソフトバンクホークスのITシステム本部長、ソフトバンクテレコム(現・ソフトバンク)の新規事業営業本部デジタルマーケティング事業統括 統括部長などを経て、17年より現職。19年インキュデータ設立を発表し、同社代表取締役社長 兼 CEOを兼任。

藤平 はい。ただし、特定の部門・部署内のデータしか使えないとなると、思うように結果が出ない可能性があります。そこで次に考えることが、会社の中にたくさんあるデータ、あるいは社外のデータを使えないかということです。AIの賢さはどれだけのデータを与えて学習させるかで変わってきますので、部門を横断して社内のデータをフルに活用しないとうまくいかない、あるいは求める成果を得られない場合が多いと思います。

シバタ 私は、ある意味でデータは人の経験を肩代わりしてくれるものだと思っています。人が1つの場所に長くとどまって何かを観察し続けることは困難ですが、データはいろいろなところにたまっていきます。それこそがデータの強みで、いろいろな所からデータを集めてきて、それらをつなげることで今まで見えていなかったパターンが見えてきます。つまり、データはつなげて使わなければ意味がないのです。

藤平 おっしゃるとおりです。そもそも自分たちの部門のデータは日頃から見ているわけです。AIを使うのなら、いつも見ているデータだけでなく、視野を広げて自分たちのデータに新たな価値を与えてくれる別のデータも活用するという視点を持つべきです。ところが日本企業の多くでは、事業部ごとなど組織のサイロ化が著しいと思います。

 欧米の企業でも組織がサイロ化していることはありますが、データは部門の壁を越えてつなげるようにしています。そうしないと意味がないことが分かっているからです。日本企業が部門ごとにデータを囲ってしまっているのは、非常にもったいないと思います。

シバタアキラDataRobot Japan
チーフ・データサイエンティスト
AKIRA SHIBATA
英ロンドン大学で物理学博士号取得後、米ニューヨーク大学研究員時代に加速器データの統計モデル構築を行い、「神の素粒子」ヒッグスボゾン発見に貢献。ボストン コンサルティング グループを経て、白ヤギコーポレーションの創業者兼CEO(最高経営責任者)。2015年より現職。

シバタ データは大切な資産だから他の部門の人に触ってほしくないという意識があるようです。でも、データはつないで活用してこそ新たな価値が生まれるものですから、部門内で抱え込んでしまうのは本当にもったいないですよね。

──サイロ化しがちな日本企業の中で壁を破るのは大変なことだと思いますが、どうアプローチすればいいでしょうか。

藤平 そこは大きな課題ですが、私はソフトバンクの事例をご紹介して「うちは横断的にやっています」とご説明しています。このときに重要なキーマンになるのが情報システム部門ですね。情シスは苦労しながら部門横断プロジェクトの経験を積んでいることが多いので、事業部と情シスがタッグを組むとサイロをうまく突破できることがあります。

顧客企業と並走して、AI・データ活用の内製化を支援

──AI・データ活用においては、高い専門性や活用事例に関する知見を有し、時には寄り添いながらサポートしてくれるようなパートナーの存在が実践のスピードや成功の確率を高める鍵になるといわれます。

藤平 何年も前からAI・データ活用に取り組まれているお客さまの場合、会社の中にAI・データの活用を推進するキーマンや部署がありますが、これから取り組みを始めるようなお客さまの場合、まずキーマンがいません。最終的には自社で内製化して(AI・データ活用を)回したいと考えていても、最初の段階では人を割けないケースが多く、そこに当社のエキスパートが入って立ち上げをご支援するケースが多いですね。

――最終的に自社で全てを回すことを目指しているクライアントが多いのですか。

藤平 そうですね。一般的に、日本企業は取り組みを始める段階でコンサルティング会社やシステムインテグレーター、広告代理店などに支援を求めることが多いのですが、これらの外部企業はそれぞれが自社で設定したKPIを達成するために動くので、全体として整合しないことが少なくありません。

 それに対して、われわれはお客さまとゴールに向けて並走し、必要なエキスパートを入れてご支援します。いずれにせよ、当社の主な役割は最初の立ち上げをお手伝いし、お客さまにナレッジや経験をご提供しながら、お客さまご自身で回していける体制をつくるサポートをすることだと思っています。

シバタ DataRobotのお客さまも、社内で内製化したいというケースが多いですね。当社ではAI活用によるお客さまの成功を「AIサクセス」と呼び、それを支援する当社のコンサルタントを「AIサクセスマネージャー(AISM)」と呼んでいるのですが、初期段階ではAISMがお客さまと並走しながらやり方などを学んでいただき、数年かけて自社で回せるようにサポートしています。

 その過程において、お客さまに最適な活用法を見つけ、次にお客さまのビジネスのどこでAIが活用できるのか、あるいはできないのかといったことに関して知識と経験を蓄積していただくという流れで進めます。

 そうしたサポートを続ける中で、お客さまにツールを提供するだけではうまくいかないことを強く実感し、2019年からはカスタマーサクセス関連のサービス(AIサクセスプログラム)に力を入れています。その結果、地道で泥くさい業務にまで関わることが増えましたが、何が原因でうまくいかないのかがよく見えるようになりました。そのおかげで今は、「こうすれば解決できます」といったご提案をできるようになってきました。

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