モビリティーと都市の未来像は、
バーチャルツインによって明確に見えてくる

森脇 スマートシティーという言葉自体は目新しいものではありませんが、かつてのスマートシティーは「インフラをどうするか」ということが主題で、インフラを支える企業がリードしていました。

 しかし最近では、インフラ関係以外にもいろいろな企業が連携することによって、新たな体験価値を生み出すことが可能なフェーズに入ってきました。それを可能にしている要素の一つが、3Dとデジタルテクノロジーの進化です。

 ダッソー・システムズでは、フランス西部のレンヌ市と共同で3Dモデルの仮想都市「バーチャル・レンヌ」を開発し、デジタル技術で地域サービスを最適化するプロジェクトを進めています。

モビリティーと都市の未来像は、バーチャルツインによって明確に見えてくる「3DEXPERIENCEプラットフォーム」を使った、レンヌ市広域都市圏の3Dモデル。街区の騒音レベルを、建造物を色分けすることで可視化している
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 例えば、デジタル技術によって、地図情報などのスタティック(静的)な情報だけでなく、騒音や人や車の動きなどの稼働するデータを取得できるようになりました。これらのデータをレイヤー(層)のように重ねていくことで、従来はできなかった分析やシミュレーションを仮想都市上で実行することが可能になりました。それをリアルな都市開発や地域サービスと相互連携させることで、より良い都市づくりを実現しようとしているのです。

 これは、私たちが「バーチャルツイン」と呼んでいるコンセプトです。デジタルツインという言葉は、皆さんもお聞きになったことがあると思いますが、リアル空間に存在するモノをデジタルに再現した双子のことです。

 これに対して、バーチャルツインはモノだけでなく仮想体験も含めたデジタルモデルです。自動車を例に挙げれば、工場で車を製造する前に、仮想空間で何回もシミュレーションして、いろいろなエラーや無駄を取り除いたり、走行中の快適性を高めたりしてから、実際のモノづくりを始めるというコンセプトです。それを都市レベルにも当てはめて、いろいろな体験をシミュレーションしながら、より良い都市開発をしていくことを目指しています。

スピード、スコープ、スケール、
3つの「S」で変革に挑む

――コネクテッドシティーやモビリティーサービスの開発に成功するためのポイントは何ですか。

ジェロンドー 全ての自動車メーカーに共通して言えることは、ピュアなモノづくり企業から、都市の延長線上にあるモビリティーサービスを提供する企業に変革しなければならないということです。そのために重要なポイントは3つあります。

 1つ目はスピード。自動車メーカーは5~10年という時間軸で車の開発・設計を行っていましたが、それを加速させないといけません。米国のEV(電気自動車)スタートアップであるカヌー(Canoo)は、ダッソー・システムズの「3DEXPERIENCEプラットフォーム」を活用して、電気自動車の開発を従来の半分以下の2年で行いました。このプラットフォームを通じて、多くのサプライヤーと協働しながら設計や開発を進めるとともに、バーチャルツインによって物理衝突テストなどのシミュレーションを行うことで、開発にかかる時間とコストを大幅に削減したのです。

 自動車メーカーが開発スピードを上げるためには、自社だけでは限界があります。外部企業と知識やノウハウを共有することで、開発にかかる時間は縮められます。ですから、もっとオープンに、ベストなところと手を組む必要があります。

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