3Dモデルを使ったMBSEが効力を発揮する
――未来のモビリティーと都市は1つのエコシステム(生態系)を形成する必要があるということが、お二人のお話から分かりました。しかし、数多くの独立したシステムをシームレスに連携させ、システム・オブ・システムズとして調和させるには何が必要ですか。
ジェロンドー 3Dモデルをベースとしたシステムズエンジニアリングによって、各種の製品・サービスを提供するための一つ一つのシステムを連携させ、市民にとって最適化された体験を実現していくことが重要です。それぞれの都市が持っている規制やインフラに合わせて、ローカライズすることも必要です。
例えば、IoT技術によってリアルタイムに冷蔵庫の中をモニターしておけば、いつ、どの家庭で、どれくらいの食材が必要になるのかが分かります。これに基づいて、生産者は最適な量を作り、小売店は店舗の在庫を調整し、物流業者は最適なタイミングで運びます。そうすると、道路の渋滞を緩和しながら、食品廃棄などの無駄を省けます。
これまで別々だったシステムが、このような形で一体化するのが未来のスマートシティーであり、3DEXPERIENCEプラットフォームを活用したモデルベース・システムズエンジニアリング(MBSE)によってそれは実現可能です。
森脇 都市サービスの受け手である市民のエクスペリエンスに関するデータについても、システム・オブ・システムズに取り込んでいく必要があります。市民の行動データを取り込んだり、市民からのフィードバックを受けたりしながら、都市開発・都市政策のプランを策定、実行するというループを形成することで、3Dモデルを使ったMBSEの効力がより発揮されます。
情報自体は世の中のいろいろなところに存在していますが、サイロ化していてつながっていませんし、情報やサービスの受け手と送り手がロジカルに、あるいはエモーショナルにつながっていません。それが、3Dバーチャルモデルを介することで距離が縮まり、つながっていくのです。
先ほど、都市のDXという領域において、伝統的な大企業はGAFAやBATHに対抗できるのかという質問がありましたが、ITジャイアントはデジタルネイティブであるが故のスピード、スケールをもって急成長を遂げました。
ただ、都市計画・開発の場合は、バーチャルとリアルの両方が必要になります。この両者のインタラクションのループを回しながら、サービスレベルを高めていくことが重要で、日本はもともとモノづくりやフィジカルな世界では強かったので、都市計画・開発においては、今までと違ったルールでゲームができるのではないかと期待しています。
――最後に、モビリティー業界をはじめとした日本企業にメッセージをお願いします。
ジェロンドー キーメッセージは、「明日の世の中は、今日とはまったく違った様相になる」ということです。100年に1度といわれる大きな変化に、伝統的な大企業はしっかりと向き合わなくてはいけません。そのためには、3つの「S」、スピード、スコープ、スケールで変革することが必須です。
変革の進め方はもちろん、企業によって異なります。目指す方向も事業開発なのか、開発スピードのアップなのか、クオリティーの改善なのか、企業によってさまざまです。私たちはそれぞれの企業の戦略に基づいて変革のロードマップを描き、優先順位付けをしながら、その実行をサポートしていきます。
――どうも、ありがとうございました。