モビリティーと都市の未来像は、
バーチャルツインによって明確に見えてくる

ダッソー・システムズ

ジェロンドー 2つ目はスコープ(視野)。コネクテッドシティーや新たなモビリティーサービスを開発するためには、AI(人工知能)やIoT、5G(第5世代移動通信システム)などのさまざまなテクノロジー、そして新しいビジネスモデルを取り込んでいかなくてはなりません。自社の目的をあらためて確認し、自社でどこまでやるのか、どこで強みを発揮するのかというスコープを再定義する必要があります。

 3つ目はスケール(ビジネスの拡張)です。自動車メーカーを見ると、どの企業も造っている車は似通っており、各国で規制対応への違いはあるにせよ、90~95%は同じようなことをやっている印象です。都市におけるモビリティーの将来を考えたとき、それぞれの都市によって必要なサービス、最適な体験は大きく異なりますので、ローカライズすることによって付加価値を生み出すことが大切です。そうした付加価値がないと、スケールさせていくことは難しいでしょう。付加価値を生むためには、自治体や企業などを含めてローカルパートナーと積極的に手を組んでいかなくてはなりません。

――都市のDXに向けては、米国のGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)や中国のBATH(百度、アリババ、テンセント、ファーウェイ)などのITジャイアント、あるいは米ウーバー・テクノロジーズなどのディスラプターが、すでに実証実験に踏み出しています。自動車メーカーをはじめとした伝統的な大企業は対抗できますか。

ジェロンドー 私は、自動車メーカーに代表される伝統的な大企業とスタートアップ、ディスラプターとの関係性について注視してきました。結論から言うと、新しい技術を持っている人たちが、伝統的な企業の力なしで自分たちだけでビジネスをやろうとすると失敗します。一方で、伝統的な企業が今までの伝統的なやり方でやっても、同じように失敗します。両者がお互いに認め合い、連携することが重要です。

 私自身、自動車メーカーに約30年所属していたので、彼らが素晴らしい経験値を持っていることを十分に理解しています。組み立てや修理、改善、改良について、優れたバリューを持っています。一方、スタートアップはそれとは異なる新しい価値を持っています。ですから、パートナーとして共創していくのが賢明です。

都市のDXにおいては、
フィジカルな世界での強みが生きてくる

――森脇さんがご指摘の通り、スマートシティーは新しいコンセプトではありませんが、日本ではなかなか成功事例を目にしたことがありません。海外ではどうですか。

森脇 明夫氏
ダッソー・システムズ
建設・都市・地域開発業界
グローバル・マーケティング・ディレクター

森脇 シンガポールが「バーチャル・シンガポール」というプロジェクトを進めており、ダッソー・システムズがリサーチプロジェクトを5年以上お手伝いしています。「スマートネーション」(賢い国家)という政府としての戦略があって、首相直轄のプロジェクトとしてスタートしたものです。

 ご存じの通り、シンガポールは非常に暑く、湿度も高い。例えば、新しいビルを建てるときに、風の流れを分析することで、温度や湿度をある程度コントロールすることができます。また、最近は高層ビルがどんどん増えて、都市が渓谷のようになり、「アーバンキャニオン」とも呼ばれますが、それによって風の流れだけでなく、Wi-Fiの電波が届かなくなることもあります。どこに基地局を置けば、通信障害が起きないのかを、バーチャルの3Dモデルでシミュレーションしながら解決していく。そのようにして、社会課題を解決していくのが、バーチャル・シンガポールの狙いです。

 シンガポールに加えて、先のレンヌ市もそうですが、「こうしたい」という明確な思いや、パッションが国や自治体にあると、成功する確率が高いと言えます。

 レンヌ市はもともと複数の市町村が合併して大きくなった広域都市圏です。そのため、組織はサイロ化しており、コミュニケーションがうまく取れなかったり、データベースがばらばらで情報を集約ができなかったりするという問題を抱えていました。

 そこで、私たちの3DEXPERIENCEプラットフォームは広域都市圏の3Dモデルをつくり、それまでコミュニケーションが取れていなかった人たちが、1つのモデルを見ながらディスカッションできるようにしました。異なる立場の関係者が公共交通、モビリティー、公共サービス、住宅、エネルギーなどの供給方法を検討し、リソース配分などに関する精度の高い、有効な意思決定をするためのプラットフォームとして活用されています。

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ダッソー・システムズ株式会社
 
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