「データの裏付けがないプレゼンは受け付けない」。代表の孫正義氏がそう言い切るほど、徹底したデータ重視のビジネスを実践するソフトバンクグループ。通信サービス部門のソフトバンクも、その主義に基づき、データドリブン経営を推進している。そのソフトバンクの法人事業部門が、クラウド型BI(ビジネスインテリジェンス)ツール「Domo」(ドーモ)の大規模導入を決めた。その目的について、法人プロダクト&事業戦略本部事業戦略統括部の小松紀之統括部長と、同統括部営業戦略部営業支援課の平之進担当課長に聞いた。
より精度の高い利益予測を目指す
――まずは、ソフトバンクの法人事業における、小松さん、平之さんの所属部門やご自身の役割について教えてください。
法人プロダクト&事業戦略本部
事業戦略統括部統括部長
小松 法人プロダクト&事業戦略本部は、法人事業の企画管理、プロダクトの企画・開発、各種施策の推進など法人事業の運営を担う部門です。私が担当する事業戦略統括部は、法人事業全体の事業計画の策定や、法人事業の8つの本部への営業活動成果に関するデータの提供、データを活用するためのツールの導入と提供などを行っています。
平之 私は、実際に導入するデータ活用ツールの選定や、各本部での活用を促すためのプランニングと社内プロモーション、教育などを担当しています。
――ソフトバンクは、データ分析とそれに基づく意思決定とアクション(施策の実行)を行い、その結果を再びデータで検証する、いわゆるデータドリブン経営の先進企業だとわれわれは理解しています。その御社が2018年以降、クラウド型BIツールのDomoを活用され、20年2月から大規模導入を進めているのは、どのような背景からでしょうか。
平之 最大の課題は、法人営業のKPI(重要業績評価指標)である売上総利益(粗利)の予測精度が低かったことです。当社は従来からSFA(営業支援システム)を利用していましたが、2017年にセールスフォース・ドットコムのSFAに切り替え、各営業担当者が担当案件の営業プロセスや成果に関するデータを入力、可視化できる環境を整えました。蓄積されたデータを基に、より精度の高い利益予測を実現させることが導入の大きな狙いの一つです。
しかし、当社の主力商品である携帯電話やインターネット回線などは、販売後も利益を生み続ける課金体系ですので、SFAに入力される現在進行中の案件を見るだけでは、正確な利益予測はできません。SFAのデータに、既存回線の純増数やそれに伴う利益推移の予測データを組み合わせて見る必要があります。
従来は各営業担当者がマイクロソフトのExcelやGoogleスプレッドシートなどを使ってデータを集計・加工し、個人ごとにKPIを管理していました。けれども、これでは非常に手間がかかりますし、課ごとや本部ごと、法人事業全体の予測として簡単に集約することができません。
そこで、個人別のデータと部署や部門単位のデータを全体的に「見える化」できるソリューションはないかとあれこれ検討した結果、Domoにたどり着いたのです。