糖分を含まない「無糖炭酸水」をアルコールの割り材としてではなく、清涼飲料水として飲む人が増えている。より爽快感を得るために、かんきつ系のフレーバーを加えたタイプを選ぶ人も多い。そんな成長市場に参入したのが、キリンレモンブランドの無糖炭酸「キリンレモン スパークリング 無糖(以下、キリンレモン 無糖)」だ。有糖のキリンレモンが持つ“レモンの味わい”を無糖で表現した新商品は、炭酸水市場の構図を塗り替える可能性を秘めている。
大成功したリニューアルから2年、
「独自の価値」をゼロから追求
1928(昭和3)年に誕生したキリンレモンは「子どもから大人までのお客さまの健康」を願って“透明であること”にこだわり生まれたブランドであり、原料には海外から取り寄せた天然のレモン香料や白ザラメなどを使用し、多くの炭酸飲料とは一線を画して着色をせず、特別に作られた無色透明な瓶が使われた。瓶に貼られたラベルには、慶事の前に現れると伝えられる聖獣麒麟(きりん)が描かれ、商品名が片仮名で書かれていた。
それ以降、消費者の嗜好に合わせた変化を続けてきたキリンレモンは、90周年を迎えた2018年、原点に回帰するリニューアルを行った。誕生時のこだわりはそのままに、国産レモンの中でもとりわけ質が良く、爽やかな香りと酸味の奥に甘味がある瀬戸内レモンピールエキスを使用して、レモンの果実感がある爽やかですっきりとした味わいとした。ボトルは初代の瓶を意識した透明感が伝わるデザインで、ラベルの中央にはキリングループの象徴である聖獣麒麟が初代同様に描かれていた。
マーケティング部
脇山正大
ブランド担当主任
キリンビバレッジ・マーケティング部ブランド担当の脇山正大主任によると、このリニューアルは「品質と透明であることという原点に立ち返ったことで大きな評価」を得て、販売量は前年のおよそ2倍(約600万ケース)に達した。
今年4月21日、同社はキリンレモンを再びリニューアルした。耳が覚えているあの『キリンレモンのうた』(正確には高木正勝がアレンジした『キリンレモンのうた2020』)を歌う上白石萌歌のテレビCMを見た人も多いだろう。
今回のリニューアルは、「キリンレモンが持っている独自の価値とは何か」をゼロから考えるところから始まった。炭酸市場には競合が多くひしめき合っている。それでもキリンレモンが選ばれる理由はどこにあるのか。
「お客さまにひたすら聞き取りをしました。するとキリンレモンを飲むと『元気になれる』『前向きになれる』という言葉が出てきました」(脇山主任)。これは他社の炭酸飲料では出てこない言葉であり、キリンレモン独自の価値だった。そこで今年のリニューアルでは、中身もパッケージも広告もこの“元気にする”という存在意義を表すものへと進化したのである。