本体からの引き算ではなく、
ゼロから設計したレモンの味わい深い新商品
目標はリニューアル時に追求した「キリンレモンが掲げる“元気にする”という存在意義」をそのままに、「子どもから大人まで、みんなにおいしいと言っていただけるキリンレモンの味を糖抜きで再現すること」(脇山主任)だった。無糖炭酸水の愛好者は40~50代の男性が多い。キリンレモンの味と子ども時代の思い出が結び付いている層だ。「無糖」の開発では、この層が抱くイメージを壊さず、キリンレモンに当初から良いイメージを抱いている20~30代の若年層にも嫌われないようにするために苦労した。
だが、キリンレモンから砂糖を抜けば完成、というわけではない。
「試しに砂糖を抜いたところ、苦味と酸味が強く出てしまいました。炭酸水には独特の酸味や苦味があり、単純に砂糖を抜くだけだと炭酸由来の苦味と酸味が強調されてしまうのです。そこでキリンレモンのレシピに手を加えるのではなく、一から設計し直したのです」(脇山主任)
無糖であってもキリンレモンと同じ味でなければならず、しかもそこにキリンレモン同様に“晴れ感”を足すことをゴールとした。“晴れ感”とは気分がパッと晴れるようなレモンの爽やかな味わいのこと。
「ただこの“晴れ感”は人によって捉え方が異なり、ブランド担当と中味開発担当のメンバー間で言い争いになったことが何度もあります。そこで、机上での話し合いだけでは共通認識を持つことは難しいと考え、ブランド担当と中味開発担当のメンバーで一緒に瀬戸内レモン農園を訪問しました」(脇山主任)
瀬戸内の青空の下で育まれるレモンと対面して、メンバーは大きな衝撃を受けた。収穫後のレモンは知り尽くしているが、収穫前のレモンを見たのは初めてだったからだ。
「レモンの木は私たちの背丈より高く、レモン畑にいるだけで、爽やかなレモンの香りに包まれるのです。他のかんきつと異なり、葉っぱからもレモンの香りがすることも学びました。色や形の異なるレモンをもぎり、果肉はもちろん、皮や中の白い綿までレモンが持つさまざまな香りを嗅いだり、かじったりしながらその場でディスカッションを重ねることで、ようやく共通の“晴れ感”を見つけることができたのです。収穫したレモンは、爽やかでほんのり甘味が感じられました。瀬戸内レモン農園を訪問したことで、ようやく“晴れ感”を統一することができました」(脇山主任)