全国584JAの声を生かして
全国組織の事業や体制見直す
――徳島県の農協職員として野菜やミカンなどの販売担当者をやっていたそうですね。職員出身の農協リーダーは多いですが、販売事業の出身者は珍しいのでは。
職員出身の都道府県の農協中央会会長は多いのですが、販売畑を歩いた人は少ないと思います。
ミカンなどの販売のため全国を飛び回る一方で、地元の高齢農家が離農して、生産が減っていくのを危機感を持って見てきました。
組合長になってから、農業の後継者育成に力を入れ、5年ほどで13人くらいが就農しました。しかし、産地を守るにはもっと大勢の担い手農家が必要です。
産地振興に身をささげてきたので、農業や農村、食料の問題をどうにかしたいという思いが人一倍強いのです。
なかにし・しょうじろう/1950年生まれ、元高校球児。近畿大学農学部を卒業後、73年旧桑野農協職員。2011年JAアグリあなん組合長、15年JA徳島中央会会長 Photo by H.S.
――今回のJA全中会長選挙は、当初無投票で現職の中家氏が再選されるとみられていました。なぜ会長選挙に立候補したのですか。
農協は「農業振興」という原点に立ち返るべきだと考えます。農業振興を最優先に置いて、ルールや組織などを見直していきます。
それでも、農協の信用事業を農林中金などに譲渡し、代理店化することは考えていません。農協自身が信用事業を行うからこそ、農業融資ができるなどのメリットがあるからです。
――中家氏は自ら2期続投を可能にするために定年を1年延長しました。役員の年齢制限を厳格化し、若返りを図ってきた改革の流れを逆行させるものです。JAグループの役員の定年制についてはどう考えますか。
会長就任時の年齢制限を何歳にするのか、なぜその年で区切るのかについて説明できなければいけません。
私がJA全中会長になったら、定年制について再度研究し、審議する場を設けて今後の方向性を示します。組織の在り方を決める重要なテーマですので、(決定のプロセスやその狙いに)不透明感が残ってはいけないと考えます。
また、若い農協組合長らが全国組織で活躍することも必要です。そのためにどんな工夫ができるのか考えます。いまの私があるのは、引き上げてくれた先輩のおかげです。それを次の世代にやってやらないといけません。
――中西さんが組合長を務める徳島県のJAアグリあなんでは、組合長の定年はどうなっているのですか。
私は61歳で組合長になり、1期目が終わった後、「この役職は長くやってはいけない」と思い、定年制を導入しました。組合長は就任時に「69歳以下」です。69歳の私は今期限りで組合長を退任します。
理事会などで年齢制限緩和を求める提案が複数回出ましたが、「私がいる間は変えない」とはっきり言ってきました。
仮にですが、JA全中役員の定年制について再検討の結果、会長就任時の年齢制限が「72歳以下」になったとしても、私がもう1期中央会の会長をやるつもりはありません。
全国には農協が584もある。優秀なリーダーがいないはずがないのです。私は3年間で改革をやり遂げ、次にバトンを渡すことに集中します。
――JA全中だけでなく、JA全農、JA共済連などは農協の改革をどうサポートすべきですか。
農協の信用事業(銀行業務)、共済事業(保険業務)の収益が減っていく中で、多くの農協が赤字になっている経済事業(農産物の販売、肥料などの購買、営農指導といった農業関連事業)の収益化が課題になっています。
全国組織は、全国584農協の声をよく聞き、農協に寄り添って改革を支援することが求められています。
全国組織の事業運営や機能、体制の見直しに当たっては、全国の農協リーダーからの提言を反映させます。先進的な農協に参加してもらい、(提言のための)会議体をつくります。地方からの声には全国組織が参考にできるアイデアもあるでしょうし、苦言もあるでしょう。
――所信表明にあった「国民世論の風を吹かす」とは、具体的にはどのような策を講じるのですか。
今回の新型コロナウイルスの感染拡大で、一部の食料輸出国が輸出を制限しました。国産の農畜水産物を消費者に届けることがわれわれ農業者の使命です。
それを実現するために、漁業協同組合、信用組合、消費者団体、医療関係者に参加してもらう「協同の輪フォーラム」を立ち上げ、理念の共有と農畜産物の生産振興、需要拡大に取り組みます。
――全国連が保険の契約目標を割り振り、地域農協の職員がノルマ達成に追われるビジネスモデルは限界ではありませんか。
ノルマがあるから職員が辞めるとは思わない。ただし、若手職員の離職が増えているのは事実です。
職員が協同組合の理念を胸に生き生きと働けるようにしたい。そのためには時代に合わせて働き方を変えることです。それをしなければ農協の事業推進力が弱ってしまいます。
私は、共済の推進は共済部門が責任を持つべきで、営農部門などの職員が過剰な共済のノルマを負うのは見直すべきだと考えています。その分、営農部門には農業関連の仕事をしっかりやってもらいます。地元の農協では、共済部門以外の共済の目標をすでに減らしています。
Key Visual & Graphic by Kaoru Kurata



