売上高6兆円の農業商社「JA全農」の地位が脅かされている。トヨタ自動車や三菱商事といった大企業が有力農家やIT企業などとタッグを組み“農業界のプラットフォーマー”の座を狙っているのだ。特集『農業激変 JA大淘汰』(全9回)の#2では、全農と企業による食品の国内消費「76兆円市場」争奪戦の現場を追った。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)
トヨタが囲い込む豪農94人
平均面積は60ヘクタール!
終戦直後にパナソニックやソニーといった日本を代表する企業が急成長したように、激変期には大きな商機が転がっている。そういう意味で、今の農業ほどビジネスチャンスにあふれた業界はない。
日本を代表する農業法人の経営者、農協組合長、農水省幹部――誰に聞いても、あと数年で「コメや野菜を作る農家の廃業が相次ぎ、一時的に農産物が足りない時代が来る」と危機感をあらわにする。
従来言われてきたような、農家の世代交代だけが「農家大淘汰」の要因ではない。
(1)人手不足(雇用力のない農家は生き残れない)(2)企業の定年延長(Uターン就農の年齢が50代から70代となり、事実上不可能になる)(3)食品ロス削減(農産物の需要激減による価格低迷)――が淘汰に拍車を掛ける。
そんな中、廃業する農家から農地を集めて急成長する「豪農」に企業が触手を伸ばしている。
ダイヤモンド編集部が毎年実施している「担い手農家アンケート」に回答した新進気鋭の農家の多くが、トヨタ自動車や三菱商事といった大企業と提携していた。
一方で、JAグループには焦燥感が広がっている。
ダイヤモンド編集部が「担い手農家アンケート」で販路について尋ねたところ、農家の年齢が若くなればなるほど、農協への出荷を見合わせている傾向が明らかになった。